No.1336 ≪まさか!(総選挙と船井電機)≫-2024.10.30

驚きました。まさか!自民党の感覚はここまでマヒしているとは!あきれてものが言えません。選挙後半の10月23日に「2000万円問題」を共産党の機関紙しんぶん赤旗がスクープしました。公認しなかった政党支部に公認料と同じ2000万円を公示前の10月10日に送金していたのです。火に油を注ぐ意図は全くないキーマンに全権委任せざるを得ない怖さを存分に味わった石破総理は「合法的でなんら問題ない」と声をからして弁明すればするほど人心が離れてゆく虚しさを痛感されたと思います。合法的なら送金する前に発表すればよいのにバレてからでは誰も信用しません。空気一変、懲罰ムードで過半数割れとなりました。
しかし、自公連立政権が今までのように思うように国政を牛耳ることができなくなった、すなわち、自分たちの都合の良いように骨抜き法案にしたり、働き方改革法のように時代に逆行するような悪法を意のままに成立させたりすることができなくなりました。様々な仕組みが変わらざるを得なくなったのは良いことです。イノベーションを起こす素地ができました。ブレブレでボロボロになった石破総理が日本を良い方向に変えるために自民党を創造的破壊し、若返りを図ることができるかどうかです。
来週はアメリカ大統領選挙の結果が出ます。果たして石破政権は「ほぼトラ」に対応した外交をしているのか、国境を接する中国・ロシア・北朝鮮と外交ができているのか懸念しています。
「政治は経済に優先する」という鉄則があります。私がコンサルタントになったころは、政治と宗教とスポーツを話題にすることは経営者のタブーでした。しかし、今は違います。政治に関心をもってインテリジェンスを磨かねば経営が行き詰まります。なぜなら、「政治は経済に優先する」からです。

さて、もう一つこの1週間で驚いたことがあります。10月24日のニュースで「船井電機が東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた」と報じられ73年の歴史にピリオドを打ったことです。まさか、あの「世界のフナイ」が! 「のぼり坂、くだり坂、まさか」とはよく言ったものです。
古い話で恐縮ですが、私は1990年代後半に前職時代からアメリカの流通視察を活発に開催しておりました。日本はバブル崩壊し自信喪失していましたがアメリカはものすごく勢いがあり魅力的な市場でした。クリントン大統領の時代です。
そのころ必ず訪問したのがウォルマートです。世界一の流通業でサムウォルトン精神が随所に生きており、ローコスト経営で巨額の利益を上げていました。そのウォルマートと船井電機は1997年に契約を結び、どこに行っても船井電機のテレビが販売されていました。ウォルマートと取引する前の船井電機は売上高1000億円、利益はほぼトントンの状態でした。それが、あれよあれよという間に「世界のフナイ」と呼ばれ2000年には東証1部に上場を果たし、2004年には最終利益262億円の新記録を出し絶好調期を迎えました。ところが、2007年には売上高4000億円の新記録を出したものの業績は赤字に転落しました。翌年2008年には創業者の船井哲良氏が退任され、その後経営者が頻繁に後をだし退し経営がおかしくなります。業績は悪化の一途をたどり2016年には338億円の赤字を出してしまいます。その後、2006年に業務提携しその後解消していたヤマダ電機と2017年に経営改善の一環で再度提携しテレビの独占販売を始めましたが思うようにゆきませんでした。混乱の中で創業者船井哲良氏がなくなり、相続したご長男は医師で承継意思はなく、船井電機顧問の紹介で私も出版でお世話になった出版社の秀和システムに経営を託すことになりました。2021年に秀和システムによるTOBが成立し上場廃止となりました。しかし、その後も迷走が続き業績は悪化の一途をたどります。そして、事業再生ではなく破産を選択して幕を閉じます。

船井電機は大阪の大東市で1951年に個人商店のミシン問屋「船井ミシン」として創業されました。その後、卸からミシン製造を自社生産し輸出するようになり、1959年にはトランジスタラジオやテレビの製造に乗り出して、1991年にはアメリカ進出を果たしました。ブラウン管テレビとVHSビデオを合体させた「テレビデオ」は大ヒットし全米でのシェアは60%に達し一斉風靡しました。船井電機の強みは圧倒的な低価格にありました。アメリカの人口の50%以上が年収300万以下の低所得者ですので低価格志向です。薄型が主流のテレビ市場にローコストのブラウン管テレビを使い、部品点数や設計を工夫してローコストを実現したフナイテレビはとても売れたのです。その後、ウォルマートとの取引が始まり、液晶テレビの生産に乗り出しフィリップ社等のブランドメーカーからOEM生産を受託しました。そこに安さで勝負する中国勢の圧倒的な低価格には対抗できず、次第に勢いを失ってゆきました。家電事業はより大規模な設備投資でローコスト競争に勝ち残らねばブランドが浸透しない市場であり、価格競争力を失ったブランドはあっという間に駆逐されてしまいます。パナソニックやシャープ、ソニー、日立、東芝等の財務・技術・人材ともに超優良企業さえも家電事業から撤退せざるを得ない分野で「世界のフナイ」と呼ばれ勝ち残ってきたのは創業者船井哲良氏の経営判断が大きかったといえます。

学ぶ点が多い1週間でした。来週はアメリカ大統領が決まっていることでしょう。