ショックな話からスタートします。いつか来るとは思っていたけれどついに2023年10月24日のIMFの報告によると、GDPランキングで日本はドイツに追い越され4位に転落することが確実になりました。5位のインドとは9000億ドルの差がありますが、成長率を考慮すると3.5年で追い抜かれそうです。このままいけば「負け癖」がついてつるべ落としになります。発奮しなければ。
さて、年末年始に向けて2024年の見通しを分析しています。「政治は経済に優先する」という普遍的鉄則を踏まえると、政治と戦争・紛争を把握する必要があります。
20世紀に入った1901年〜1945年までの45年間に起きた戦争は30件。その中に日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦も含まれています。戦後、国際連合が設立され世界は多少穏やかになったと思って数えてみると、1945年〜1989年の冷戦終結までの45年間で72件の戦争が起きています。1989年から2023年のイスラエル戦争まで35年間で63件の戦争が起きています。さらに驚くべきことは今も継続している戦争は27件もあります。1960年〜1975年のベトナム戦争は終結していますが、1950年に始まった朝鮮戦争は休戦中であり終結していませんので継続状態にあります。
第二次世界大戦後、次第に帝国主義が影を潜め、ソ連邦が崩壊したことで、独立国が多数誕生し、その結果として大国の抑えが効かなくなり内戦・戦争が増加しています。日本は幸か不幸か憲法で非戦を宣言していますし、軍隊も持っていませんので、世界の潮流ともいえる戦争・内戦にかかわることは非常にまれでした。国連の要請で国連軍に参加することはあってもあくまで後方支援ですので、私たちの日常に戦争はテレビ報道の域を出ませんが、経済的には多大な影響を受けています。その一つが覇権国アメリカの経済動向です。歴史を振り返るとアメリカが参戦している間は好景気になり、世界中が好景気になります。しかし、戦争が終わると不況になり世界中に波及します。戦争と経済は密接に相関関係があるようです。
少し古い記事ですが、2022.12.8付のForbsジャパンのコラム「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表した軍需産業に関する新たなデータによると、世界の軍事関連企業大手100社による武器および軍事サービスの2021年売上高は、前年比1.9%増の5,920億ドル(約80兆円)に達した」を見つけました。
軍需産業のすそ野はエンジン自動車産業同様相当広いと思われますので最低でも約10倍はあろうかと思います。そう仮定すると世界の軍需産業大手100社の関連市場は約6兆ドルと推定できます。世界のGDPは約75兆ドルですので、約8%を占めることになります。
しかも、100社中40社がアメリカ企業でその構成比は50%を占め、さらに上位5社はすべてアメリカ企業でその構成比は約32%。6位から10位の企業の内、4社は中国企業で構成比では約17%を占めています。上位10社で約半分を占めていることになります。ここでも中国企業のアメリカ追い上げが顕著です。
ちなみに2007年のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の調査結果では、上位100社の売上高は3,197億ドルでしたので、約15年で185%の成長です。
一方、2018年〜2022年の5年間の武器輸入国ランキングを計算すると、1位インド(154億$)、2位サウジアラビア(133億$)、3位カタール(83億$)、4位エジプト(62億$)、5位パキスタン(51億$)で、上位5か国で約35%のシェアを占めています。最優先VIP得意先です。
2020年〜2022年の3年間はコロナ・パンデミックというウイルスとの世界戦争がありましたので、軍需産業の出番はなかったでしょうが、その時に支給されたコロナ補助金は2021年だけ見ても世界で約14兆$もあります。この資金が世界の経済成長に影響し、インフレを昂進し、所得格差を拡大させていることは間違いありません。その効力は2024年中も続くでしょう。さらに、中東やヨーロッパでの戦線拡大が影響して武器弾薬がさらに大量に消費されますので在庫が減少します。在庫補充の生産体制も臨戦態勢となり、戦争が落ち着くまで経済成長は続きます。それが終わると失業者が大量に出てきます。
戦争による破壊の後には復興建設が始まりますが、軍需に比べれば規模ははるかに小さいので傾向として景気後退が進むと思います。最先端の技術を駆使して予測される景気見通しは的中することはめったにありませんので、私の予測など全くあてになりません。精度の高いAI予測が出てくることを楽しみにしております。
いずれにしても、過去の歴史に学べば、近い将来やってくる景気後退に対して、中小企業でできることは限られていますが、基本は財務力を強化することに尽きます。財務力の基本は限界利益の向上であり、それは営業力と開発力です。まだ、好景気と言える間にしっかりと営業力と商品開発力をつけてゆきましょう。それも世界市場を意図した営業力と商品開発力を意識しましょう。