2023年は大きな節目になる年です。1242号(2022年12月28日号)「2023年を占う」と合わせてお読みいただくと多少はわかりやすいかもしれません。2023年は「癸卯(きぼう)」で、「万事正しく筋道を通してゆけば繁栄に向かいますが、これを誤ると大紛糾しどうしようもなく混乱する」1年です。
今顕在化しているインパクトをまとめてみました。
1)常任理事国ロシアが母国ウクライナに侵攻して4月24日で1年2か月になります。クリミア侵攻からは11年2か月です。両陣営の主要国の動きが活発になり、それぞれの国が武器供与という「ルビコン河」を渡ったようですから新たな展開と新たな変化を惹起し、停戦迄まだ時間が必要のようです。
2) 2022年10月には円安がピークを迎え1$=150円を超えました。コロナ対策で大量の資金が市場に供給されてだぶついているところに、インフレ抑制のためにFRBが頻繁に利上げした結果、日米の金利差が0.6%(2022年1月)→4.6%(2022年10月)となり、安定通貨と言われる「円」で資金を持つより「ドル」で持つのは当然ですから、円売りドル買いによる急激な円安となりました。今は134円台で推移していますが、それでも随分と円安です。
3) 円安になれば、エネルギー資源(原油、LNG等)がコロナ禍でサプライ不足になっている上に、ロシア・ウクライナ戦争の影響で高騰しており、そこに円安が加わるのですから物価は上昇してしまいます。エネルギーコストは全産業に影響を与えますので、値上げはまだまだこれからも続くでしょう。
4) 2020年ごろのコロナ禍によるコンテナ不足、船不足、船員不足から輸送期間が倍以上になりコストが6倍とも10倍ともいわれた異常値に比べると落ち着いているとはいえ高止まりしているようです。資源や原料を輸入に依存する日本では海外輸送コストの高騰はインフレを持続させてゆきます。
5) コロナ禍は一段落して、3月13日からマスク着用は個人の判断にゆだねられ、5月8日からは感染症の指定が2類相から5類相当に公的に変更になります。これによってアフターコロナのライフスタイルが本格的に動き出します。
6) 円安はインバウンドの急激な回復を引き起こし、国内ではホテルの予約ができない、飛行機の予約が取れない、タクシーの予約ができない、飲食店の予約が取れない、公共交通機関が混雑する等の日常生活に影響を及ぼしだしています。
7) コロナ禍で深刻な影響を受けたホテル等の観光関連施設や飲食店、タクシードライバーが職場を失い、新たな生活スタイルに馴染まざるを得なくなった人たちは元の職場に復帰しない人が大半のようです。これによるインバウンド関連のビジネスは深刻な人手不足を招き、ロボット活用や非接触システムを構築するには莫大な設備投資を必要とするため、それができる企業とできない企業に淘汰されてゆきます。
8) 働き方改革による物流危機2024年問題が迫っています。いままで猶予されていた業界も一律に働き方改革規制が適用されます。対応するには、人を増やさねば今の物流を維持できないのですが、肝心のドライバーの確保は致命的なぐらい悲観的です。バケツリレー等の取組が始まっていますが、まだまだ浸透するには時間が掛かります。落ち着くまでの間、運べない荷物は約3割という試算もあります。
9) 多くの中小企業で人手不足は深刻で、募集しても応募がない状況が続いています。給与水準を思い切って上げて募集した企業にはそれなりの反応はありますが、上げ幅が低い企業は問い合わせすらないのが現状です。
10) 30年間給与が上がっていなかった世界唯一の国「日本」と世界の給与ギャップは相当なものです。主観的感覚的に言えば、日本の賃金は世界に比べて最低でも50%以上の低いと思います。先日、テレビ報道でタイの日系企業向け求人斡旋会社の特集番組を放送しておりましたが、「月給40万円でも辞退者が続出する」と嘆いていました。日本ではIT企業を中心に学卒初任給を6.5万円アップして30万円弱で募集する企業も出てきています。
11) 海外留学生や技能実習生は言葉の壁と為替の壁で日本を敬遠しています。顧問先ではドル建てでの給与を条件にされたため、断念せざるを得ませんでした。
12) 国を挙げて「賃上げ」が叫ばれていますが、固定費の上昇は避けられない状況が続きます。それをカバーするにはDXによる生産性を高めないと減益を余儀なくされ、場合によっては黒字倒産のリスクを孕んでいます。
13) DXの中でもAIの導入スピードは驚異的で、中でもチャットGPTの登場であらたなステージに入りそうです。今までITバブルは何度かあり、破裂して、新たなバブルが現れ、またはじけて、その繰り返しの中でとんでもない進化を遂げています。恐らくこれは世界中でいくら規制をかけても今回は効果がないと思います。企業はITエンジニアやITに強い人材採用・育成に力を入れないと生き残れないでしょう。
14) 最も確実な未来予測と言われる人口予測ですが、日本は衰退の一途をたどるのか、回れ右をして移民の受け入れを行うのか、先のことはわかりませんが、出生率の改善による人口増加に反転するのは50年近い時間が掛かります。2022年の出生数は80万人を割りました(1995年対比では▲33%)。世界では毎年13%増加しています。当面のビッグ消費者と言われるZ世代です。日本国内だけでものを見ていたのでは、企業の成長はおろか存続すら困難になります。
これらのインパクトから明確なことは「ヒト」対策がもっとも重要であることがわかります。
次回はこれらの点について考えてみたいと思います。