No.1257 ≪「食」を考える≫-2023.4.20

今日は不思議なことがありました。全く同じ視点の情報を違う場所でつながりのない2人の経営者から聞きました。これは100匹目の猿現象では?シンクロニシティ?というほどの奇跡ではありませんが、感動しました。

お一人は、那覇市倫理法人会モーニングセミナー(6:00-7:00AM)でのこと。鹿児島で飲食店経営の傍ら若者特に高校生の食育に力を入れておられる㈱樹楽の梛木春幸社長です。講演の中で「世間では一次産業は後継者不足だと言われているでしょ? 現実はそうじゃないんですよ。生産者は『こんな儲からない仕事は自分の代だけで十分だ。子供には継がせたくない』と思っているんです。生産者の平均年齢は約60歳。あと20年もすれば体が動かなくなる。すると、後継者のいない一次産業はますます衰退します。衰退させているのは今を生きる私たちです。衰退させないためには、私たちが買うことです。買えば、生産者は潤いますから、『こんな魅力的な仕事は子供にも継がせたい』と思います。家をでた子供も戻ってきます。」とおっしゃっていました。

二人目は、顧問先の食品メーカーの会議でのこと。購買戦略を担うA専務が「先日、乾物メーカーの方が見えた際、仕入先の生産者の現状について情報交換しました。『生産者は儲からない仕事は自分の代だけで十分だから子供には継がせない』『先祖から引き継いだ土地を自分の代で終えるのは忍びないのでやっているが、子供に無理強いはできない』と言っておられるそうです。このままでは生産者がいなくなり国産品がなくなってしまう。わが社も食品メーカーとして長い目でものを見て対応してゆかねばならないと思った」と話しておられました。
また、専務の話をきっかけに「最近の海の中の様子がおかしい。海の中の砂漠化が進んでいる。今年はイワシが増えすぎている。そのイワシを追って南海に生息するイルカが北上して大量に低体温症で死んだ。イワシが多すぎてその下に生息するサバが取れず記録的不漁だ。海苔が生育せず全滅に近い、特に有明産は深刻だ。その対応策としてコンビニでは海苔なしのおにぎりの商品開発が活発だ・・・」等の報告がありました。

「(1次産業の生産者が)後継者に継がせたくない」という全く同じ視点の話題が一日に二度も出てくるというのは、めったにありません。業界の話ならよくあることですが、一次産業全体の話は珍しいです。現状がいかに深刻な状況であるかあらためて危機感を持ちました。
後20年もすれば必ず確実に到来する大幅な人口減少と逆ピラミッド型アンバランスの日本で、生産者を未来に希望を持てない袋小路に追い込んでいる私たちの生活スタイルは、気づいた人から是正してゆかねばなりません。

2022年4月20日号「食糧自給率を高めるビジネス」でも報告しましたが、再掲します。
「日本の食料自給率をカロリーベースでみると37%となります。種類別カロリーベースの自給率をみると、米98.3%、小麦15%、いも類66%、でんぷん9%、大豆21%、野菜67%、果物31%、畜産物16%、魚介類51%、砂糖類37%、油脂類3%です。畜産物は国産飼料か輸入飼料かで自給率が変わります。畜産物の自給率16%は国産飼料を使った場合です。輸入飼料を使って飼育している場合だと自給率は63%となり、飼料の多くを輸入に依存していることがわかります。」
安全保障的に見れば、小麦粉、でんぷん、畜産物はどこかの国で何かが起きると価格が高騰する現象が起きます。容易に価格転嫁できない生産者は廃業せざるを得ないかもしれません。するとますます、供給が減りますので価格が高騰し、日常生活を直撃します。にもかかわらず、年間の食料廃棄量は1535万トンに上り世界第2位です。

「食」に関してもう一つ思い出したことがありました。「医食同源」にまつわる話題です。
便利だからと言って、カビの生えない食品を日常的に摂取している日本人の食生活は明らかに異常です。また、世界中の食べ物をお金さえ出せはいくらでも口にすることができることがいかに健康を害しているか。人類創生の歴史の中で、最も重要な課題は「食べ物」を確保する事でした。「食べ物」を与えて下さる天に神をみて信仰が始まったともいえます。土地にあった食べ物を食べることで寿命を全うすることが基本でした。
だから食べ物には体を温めるものと冷やすものが必ずその地域に育っています。
現代栄養学には矛盾がいっぱいあり、西洋人向けに体系化された栄養学は、東洋人には当てはまらないものも多いと言われ、マクロビオテックのような、『身土不二』『一物全体』という東洋思想の方が日本人には適しているといわれています。
『身土不二』とは育った地域で生産される食べ物を食べることが体に最も適している。いわゆる地産地消です。寒い地域には体を温める食べ物が育ち、熱い地域には体を冷やす食べ物が育ちます。例えば、寒冷地で育つ「りんご」は体を温めますが、南国で育つ「バナナ」は体を冷やします。また、夏野菜のナスは体を冷やしますが、ナスと一緒に添えられる生姜は体を温めます。生姜のように主役の添え物として使われるものを「薬味」というそうです。なるほど、昔の人は偉かったですね。古くから伝えられている食文化は理にかなっていることが多いのです。