No.1140 ≪世界の体制変更を試みる動きが活発になる≫-2020.12.2

世界の体制変更を試みる動きが活発になる今年の干支は「庚子(かのえね)」です。庚子(かのえね)はどのような年か予想したNO.1093 号(2019 年12 月18 日発行)を読み返し引用します。
的を得ているか外しているか見てみましょう。
「『庚子(かのえね)』は大きな変化のきっかけになる年です。前回の『庚子(かのえね)』は1960年です。この時に日本では60 年安保が締結され、アメリカではJFK が大統領になり、ベトナム戦争に突入しました。
庚(かのえ)は十干の7番目で、エネルギーは陽。五行でいえば金。方角は西。植物は花が咲き実をつける準備に入るのです。『継承・継続』『償う』『更新』という3つの意味をわせて持ち、進化させることが使命となります。『子(ね)』は増える。すなわち細胞が分裂・発達する能動的積極的な様を表し、それがいろいろに組み合わさってさまざまの組織・器官をつくってゆきます。十二支の最初に位置し、陽を表し、五行では水、方角は北。庚と子は相生関係にあり万事順調に進む吉相を示しています。『更新』によって物事が『はじまり』、順調に進展する様が想像できます。」

新たな変革の「はじまり」だという点はまさにその通りでした。干支は古代人が森羅万象を体系化して統計化したものですので、60 年に一度起きる現象を表現しています。

コロナ・パンデミックで起きたことは、従来の常識が全く通じなくなったことです。新たな価値創造が進んでいる真っ最中です。

陰りが見えつつあるとはいえまだまだ世界のダントツ超大国アメリカがトランプ大統領誕生を機に、COP25 のパリ協定からの離脱、TPP の離脱という自国中心主義に舵を切り、アメリカにとって国際マナーを守らないような国を貿易と金融を中心に経済制裁を加え、関税戦争に持ち込んでいます。11月3 日のアメリカ大統領選挙はバイデン候補が勝利しているようですが、確定までに相当な時間が必要な現状があります。2021 年1 月21 日まで待たねばならないようです。
世界的なコロナ・パンデミックの中で、ダントツ超大国アメリカが分裂しており、世界秩序の変更を企図しようとする勢力にとっては揺さぶりの絶交のチャンス到来といえます。日本にとっては危険極まりない事態に直面しています。選挙中に報道されたバイデン親子の中国疑惑もあいまいなままです。もし、バイデン候補が大統領に就任した場合、中国との関係がどのようになってゆくのか、中でも安全保障の問題はデリケートでナーバスな問題で、米中のはざまにいる日本の立ち位置は極めてむつかしいものになるかもしれません。

コロナ禍で世界の先進国が軒並みマイナス成長を余儀なくされている中で、中国だけはプラス成長を成し遂げて気を吐いています。「製造2025」で9 大戦略10 大重点を掲げまい進し、ひとつづつ着実に達成しているさまがうかがえます。それを阻止しようとする勢力もありますが、中国抜きのサプライチェーンを作らせないよう様々な手を打ってくるでしょう。完成品メーカーは部品一つなくても生産できませんので工場は止まってしまいます。そうなれば中国の言いなりになります。日本ではサプライチェーンの多角化や中国以外の国への移転について巨額の補助金を出して産業界を支援していますが、撤退コストを考えれば思うように進まないのが実情です。
このような中で対抗策の一環でしょうか、12 月1日に中国は「輸出管理法」を施行しました。大義名分は「安全保障に関わる製品などの輸出規制を強化する」ためですが、実際には内容は極めて不透明なので、中国政府が規制対象だと判断すれば、いつ何時規制対象になるかわからない不安があります。なんとでも理由はつきますので顔色をうかがいながらビジネスをしないといけなくなりました。基本的には中国工場は輸出向けではなくて中国国内向けの工場にしないと不安でしようがないと思います。
日本と中国のそれぞれの東アジア戦略が共同作業によって成立したRCEP(地域的な包括的経済連携協定)は世界最大の自由貿易圏となります。RCEPの中で重きをなすのが中国ですので、中国の国益優先の流れにならないよう監視しなければなりません。中国は基軸通貨をドルから元に変更する並々ならぬ意気込みを明らかにしています。
コロナ禍によって一帯一路加盟国の財政悪化で中国の支配エリアが広がれば、経済的にも国際政治の面でも大きな力を発揮してきます。
先日、実践人京都で門田隆将氏の講演がありました。氏が協調しておられたのは中国との関係です。講演の大意は以下のようなものです。
「皆さん、よく覚えておいてください。2012年11月29日の習近平の演説で、彼は『2049年建国100年には、100年の恥辱を晴らし偉大なる中華民族を復興する』と明言しているのです。それを着実に実行しています。100年の恥辱とは1849年から1949年の100年です。アヘン戦争のあと弱体化したところに列強国が次々と租借地を広げ、ついには日清戦争で日本に屈服した。その後、辛亥革命を経て中国共産党による建国がなったのです。この100年の恥辱を晴らすとは日本に向けて晴らすことを意味していることを忘れてはいけませんよ」
私が関係している沖縄では中国公船が日本の領土であると国際的に認知されている尖閣諸島の接続水域に頻繁に入ってきて領海侵犯しています。
11月24日に中国側の要望に日本が応えて実現した王毅外相の来日時に、尖閣諸島の領海侵犯に苦言を呈したところ、王毅外相はなんととんでもないことを口にしました。
「一部の真相がわかっていない日本漁船が釣魚島(魚釣島の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生している」と発言しています。つまり、外相会談という公の場で中国の外相が中国領土に日本が領海侵犯していると言っているのです。
尖閣諸島は中国領土だと。香港の次は台湾獲得を狙っていますし、その次は沖縄を狙っています。さて、日本はどのような対応をとるのでしょうか。体制変更を企図しようとする勢力がコロナ禍を機に勢いを増さないように注目することが企業経営の将来性にも大きな影響を与えてきます。