No.1407 ≪3.11と会社を守る知恵≫-2026.3.4

2011年3月11日(金)14:46 マグニチュード9.0という大型地震が東北沖で発生し、死亡者19775名、行方不明者2550名、負傷者6242名(消防庁調査:2024年3月1日時点)の甚大な人的被害がありました。地震及び巨大津波によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

また、福島第一原発が想定外の洪水により全電源喪失し、メルトダウンしました。当時の吉田所長以下職員の働きで爆発は食い止められましたが、原子炉の底に溜まった高濃度放射性物質を含んだ燃料デブリ約880トンは、いまだに取り出しのめどさえ立っていません。2025年4月に0.9gの取り出しに成功していますが、全量撤去には気の遠くなるような時間が必要です。故吉田所長は「もし、2号機が爆発していたら、東日本全域が人の住めない土地になっていた」と証言されています。(門田隆将著『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』、2020年公開の映画『Fukushima 50』参照)

多くの犠牲の上に災害に対する考え方が大きく変わりました。主なものは次のようなものです。

(1)観測点が増設され、発生後速やかにスマートフォンへ自動配信されるようになりました。
(2) S-net(日本海溝海底地震津波観測網)構築により沖合で津波を早期検知し、早い警報が可能になりました。
(3) 避難教訓が普及し、学校防災教育が強化されました。
(4) ハザードマップが全面見直しされ、いたるところに海抜表示されるようになりました。
(5) 企業・自治体のBCP(事業継続計画)構築が進み、サプライチェーンの複数化、データのクラウド保存、テレワーク体制整備が進みました。帰宅困難者対策も充実しました。
(6) 太陽光発電を主として再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が導入されました。
(7) 病院や避難所等のマイクログリッド・蓄電池導入で非常用電源が強化されました。
(8) 世界でも厳格な原子力規制基準が制定され、原子力安全対策が強化されました。
(9) LINEの開発はじめ、SNSによる防災アプリが普及しました
(10) 高台への集団移転等の「復興まちづくり」の新しい考え方が普及しました。

会社が独自に取り組めるのはBCP策定です。「社員を守る」「仕入先・協力会社を守る」、結果として「会社を守る」のがBCP策定ですが、結果的にあまり普及しませんでした。BCP策定企業は震災前の24.8%から震災後40.4%と一時的に大きく増加しましたが、その後は横ばいをたどり、コロナパンデミックの時に47%まで増加しました。その主役は従業員数100人~500人の中堅企業でした。(出所:NTTデータ経営研究所「企業継続にかかわる意識調査」https://www.nttdata-strategy.com/knowledge/ncom-survey/250226/)

東日本大震災では、半導体工場、自動車部品工場、電子部品メーカー、化学素材メーカー等が東北地域に集中していたこともあり、特定の1社が止まると世界中の生産が停止する事態になりました。自動車メーカーが国内外で減産、スマートフォン部品が不足、海外工場も停止しましたので、関連企業はサプライチェーンまで踏み込んでBCP構築しました。しかし、一般的には災害を対象とした「災害BCP」が主流でした。コロナパンデミックになってサプライチェーンまで網羅する必要性が発生し、「経営BCP」に進化した経緯があります。

問題は、災害や非常事態の発生をきっかけにBCPを策定しても、のど元過ぎれば、忘れ去られることが多いのも事実です。モノとして存在しているだけで、運用までゆきません。ISOシステムは民間団体の運営ですが、強制力があります。それは日常的に「品質」を担保する経営活動を対象にしているため、現場に浸透してゆきますし、上部企業が取引の条件としてISO取得を要求すれば、自然と浸透してゆきます。
しかし、BCPは災害や非常時という、いつ起きるか想定できない事態に対処するためのものですから、関心は薄くなります。そこで必要になるのがBCM(Business Continuity Management)とタイムラインです。
BCMは策定されたBCPを定期的に見直し、定期的に訓練することで、定着させてゆく管理手法です。
さらに、タイムラインは、各企業の身近で具体的な対象、例えば、洪水とか山火事とか川の氾濫とか、を選び、発災を前提として「いつ」「誰が」「何をするか」を時系列で整理したものです。防災関係機関と連携しておき、災害時の発生状況をあらかじめ予測したうえで作成する時系列の対応をあらかじめ設定するものです。

このような機会に、会社を守る仕組みを見直してはいかがでしょうか