No.1386 ≪新しい時代に柔軟な会社が伸びる≫-2025.10.9

高市早苗新総裁が誕生しました。まず間違いなく憲政史上初の女性総理誕生です。本来なら昨年に実現していたでしょうが、1年遅れで新しい時代が始まります。過半数割れの第一党の悲哀を存分に味わうでしょうが、岩に根を張り潮流にあわせて軽やかに泳ぐ昆布のように対処していただきたいものです。神武天皇が日本建国の地として選ばれたまほろばの国、奈良出身の総理に大いに期待したいものです。

さて、目加田経営事務所では今年に入り時流に合わせた2つのサービスを始めました。
一つはAI支援サービス、もう一つはハラスメント防止支援サービスです。両方ともとても専門性の高い分野ですが中小企業には対応できる組織や人材や資金はありません。
国は政策的に補助金を多数準備して普及促進を進めますが、いずれも縦割行政ですので横断的な自由度の高い仕組みは少なく、それぞれの根拠法によって特定団体の支援を前提にしています。利用するには人材不足で疲弊しているところにさらに仕事が追加されて疲弊する悪循環が生じ、それによる退職も出てきます。
生成AIでは「マルチモーダル」が標準になりつつありますが、「少数精鋭主義」「多能工化」「セル生産」が示すように中小企業はもともと「マルチモーダル」でなければやってゆけませんでした。時間をかけて場数を踏み、能力開発と訓練を継続し、能力に準じて待遇もアップするやり方です。今は天職天国ですが、コスト的にも体制的にも中小企業にはハードルが高く、なかなか採用できず、社員の忍耐とロイヤリティで成り立っているのが現状です。

新卒・既卒・中途を問わずリクルートに苦労する中小企業にとって離職防止が最も喫緊の課題です。イタリアのパレート博士が喝破した「2・6・2の法則」が人間社会には存在しており、2割の向上心旺盛な努力家のAグループ、6割の日和見のBグループ、2割のネガティブやる気なしのCグループで構成されています。退職するのはAグループです。Cグループをシャッフルして新しい組織にしても次の「2・6・2の法則」が現れます。離職防止はAグループに対する対策です。Aグループがイキイキする仕事のやり方、ワクワクする会社にすることです。すると組織は高度に活性化された渦組織になり、Bグループも中途入社者も渦に巻き込まれて急成長してゆきます。

ではどうするか。AI活用とハラスメント防止がポイントになります。
まず、AI活用のポイントは現状業務を棚卸し、それを3分割します。「なくす業務」「自動化・AI化する業務」「付加価値をつける業務」の3つです。
人間間が担当するのは最後の「付加価値をつける業務」です。今では当たり前になったAI自動応答電話、LINEによるAIチャット、請求業務、入金業務、勤怠業務、各種人事記録業務、見積書や申請書類作成業務、旅費精算等の誰がやっても同じ結果にならないといけないルーチン業務は会計ソフトやRPAに移行する。
会社の極秘文書やデータ以外はほとんどがクラウド処理ですのでリモートが可能になっています。在宅でも車中でもリモートブースでも業務遂行ができます。AIで字幕付き動画マニュアルを整備し新入社員や中途入社者の社員教育はE-ラーニングで行います。基礎知識を習得後OJTでレベルアップを図るのです。

もう一つはハラスメント防止対策ですが、これは「言葉使い」と「クオリティ・コミュニケーション」に尽きます。ハラスメントの基本はご存じのように受け手がどう思うかです。好意を持っている人から「バカだな」と言われてもハラスメントになりませんが、そうでない人からニコリともせず「バカだな」と言われると人格否定のハラスメントになります。十人十色、「人生いろいろ」(島倉千代子)。互いのバックグランドを知ることで感情が変化します。「ジョハリの窓」の明るい窓を広げる方法は自己開示と他者評価しかありません。一人一人を全受容することで、ハラスメントは激減します。それには働き方、特に子育てママとパパの選択肢の自由度を増やすことです。

若い社員の離職が止まらない原因がパワハラだとわかった企業は役職呼称を廃止し「さん」付け呼称に変えました。なんと、結果は退職がゼロになりました。「NG言葉」リストを作って社内公表することで皆が意識することに成功した会社もあります。
また30名ほどの女性が多い職場では時短制度を導入しました。フルタイム正社員、時短正社員(3~8時間の選択制)、パートタイマ―社員、バイト社員を家庭環境に応じて選択自由とし制度移動も自由にしました。出退勤時間の自由度も増やしました。時短正社員は月給制で賞与、退職金の年数加算は時間割合で支給する。パートタイマー社員は退職後再雇用し、出勤曜日と勤務時間を選択し月給制で賞与なし退職金加算なし。バイト社員は退職後再雇用し時給計算で賞与なし、退職金加算なし。正社員勤務が可能になれば本人の希望により時短社員又はフルタイマー正社員になる。
この制度導入のきっかけは、寿退職、出産退職、復職後退職が多かったので、退職する女性にヒヤリングすると、「同僚に迷惑をかけたくない」「気兼ねしながらの仕事はストレスがたまる」「子供の急病で帰った後をフォローしてくれる人が良く思っていない声が聞こえる」「同じ仕事をしているので子供のことを理由に特別扱いするのはおかしいと言われる」などの理由だったのです。意図せざるハラスメントです。
話し合いの結果、子供に愛情を注げる大事な期間(約10年間)を職場皆でケアすれば離職がなくなるし、カバーする人も納得できるというアイデアが出てきて導入したのです。
すると、季節ごとのイベントにほとんどのママさんは子供連れで参加するのですっかり大家族のように皆で子供を育てている職場になりました。子供同士のコミュニティもできあがり悩みごとの相談に年長の子供が乗っているようです。子供を持たない人でも親の介護があるので、同様の制度を利用することで、離職率は激減しました。 攻めの離職防止が未来を明るくすると思います。