No.1396 ≪営者は随筆を書きましょう≫-2025.12.17

日本には「言霊」という考え方があります。言葉に宿る不思議な力や霊力のことで、口に出した言葉どおりの現象や結果が、現実世界に現れるという考え方です。霊力にはプラスもマイナスもありませんので、良い言葉、美しい言葉、ポジティブな言葉を口にすると、不思議な霊力が味方して、縁起の良いことが起こります。また、悪い言葉、汚い言葉、否定的な言葉を口にすると、不思議な霊力が味方して、苦難や悪霊を導き入れてしまいます。
「ありがとうの詩」で有名な清水英雄氏は、口から出してよいのは「明元素」(明るくて元気で素直な言葉)だけで、決して口にしてはいけないのは「暗病反」(暗くて病的で反抗的な言葉)とおっしゃっています。

これは、日ごろからお伝えしている「鏡の法則」と全く同じです。鏡の法則では「不思議な霊力」のことを「潜在意識」と言っていますが、性質もパワーも同じものと考えていただいて結構です。
キリスト経では聖書「ヨハネ福音書」の冒頭は「最初にことばありき」から始まりますが、ここでいう「ことば」は救世主イエス・キリストのことであり、word(言葉)ではありませんので、念のため。

また、昔から「日本は言霊の幸(さき)はふ国という言い伝えがある」と奈良時代の歌人、山上憶良が長唄のなかで語っています。つまり、言霊の力が宿り、人々を助ける国であるという言い伝えです。
「言葉」と書いて「ことのは」と読みます。言玉(ことだま)という表現もあります。「言祝ぐ(ことほぐ)」は良い言葉を唱えて、神の力を動かし、吉事を招く行為です。乾杯の時に「弥栄」(ますます栄え、末永く繁栄する)と唱えるのも同じ意味合いです。漢字が流入する以前はオシテ文字という象形文字に似た文字が存在し、古事記の原典となったホツマツタエがありますが、このころは「音(おん)」が中心でした。古事記で音を漢字に当てはめだしてから、本来の意味合いが変化していますが、神代の時代、縄文時代から日本では「言霊」を大事にしてきた民族の文化があります。

ことばの「こ」は九重、つまり天皇のおられる場所を言い、「と」はお告げ(神託)、神のメッセージを意味します。「こ」→「と」、つまり、人が神に祈りをささげてお告げを受ける時に使うのが「こと(琴)」です。琴はいわば人と神をつなぐホットラインです。古事記や日本書紀の中に様々な場面で登場します。「こ」「と」の集合体が言葉です。
だから、日本人は生まれながらにして神性で、その本質が「言葉」に象徴されていると言えます。口から出す言葉は、明るい言葉、美しい言葉、元気な言葉、素直な言葉、誠実な言葉、建設的な言葉、積極的な言葉、楽しい言葉、うれしい言葉を使うことが心地よいのです。

そして、ここからが本題です。あなたが人の上に立つ経営者であるならば、その神性の本質である「言葉」を使って、社員の能力を引き出し、動機づけし、豊かな人生を送れるように導く使命があります。勿論、スピーチだけでもよいのですが、文字にあらわして発信することでより言霊を意識できるようになります。
文字にする方法として日記でもよいのですが、日記はプライベートが含まれますし、三日坊主で終わった経験をお持ちの方が多いと思いますので、あまりお勧めではありません。かくいう私も三日坊主タイプでした。
そこで、簡単には終われない、終わると恥ずかしい、みっともないと言えるものが望ましいです。それは何かというと「エッセー(随筆)」です。吉田兼好の「徒然草」、鴨長明の「方丈記」、清少納言の「枕草子」スタイルです。
ナンバリングするともっと良いですね。「NO.1 タイトル〇〇」とすると、NO.2があるものだと思われますので、続けざるを得ません。社員に向けてどんなメッセージをだすか、社長は何を考えているか、どんな会社にしたいのか、時事問題についての考え等、何でも構いません。

私は、目加田経営事務所を創業して9か月後に、5分で読める今のメルマガ「21世紀経営クラブ」を毎週水曜日に発信することを決めました。NO.1とナンバリングして、可能な限り続けようと思い、今ではおかげ様で1396通目になりました。短い文では926文字、長い文では2000字以上あります。文字数よりも、内容よりも、回数にこだわるのです。次第に文章が上手になります。読み手に取ってわかりやすい文章になります。常に読み手(社員)を意識して、読み手(社員)がわかる言葉で書けるようになります。常に情報を探してアンテナを張りますし、人と会うようになりますし、普段読まなかった本も読むようになりますし、話題も豊富になります。インプットだけで終わっていたのが、アウトプットするようになって、頭の整理ができるようになるのです。

随筆の次は、小説を書くのです。小説は物語ですが、そのベースはあなたの生きざまが反映します。美化するだけでは面白くないので醜悪な地の部分も出てきます。文字にアウトプットすることで、頭と心が整理されてゆきます。
しかも、小説はクリエイティブですから、できなかったこともできてしまいます。これが現実に反映するから面白いのです。小説を書いたなら、多くの出版社があなたの文章を求めていますから応募することです。結果を求めず、短編でも中編でも長編でも、エッセーでも、SFでも、童話でも、サスペンスでも、恋愛でも、純文学でもなんでも構わないので応募するのです。プロが無料で添削してくれます。あわよくば賞でも取れれば、出版できます。すると、国会図書館に永遠の記録としてあなたの生きた証が永遠に残ります。

いずれにしても、読み手(社員)に明元素な言霊を紡いで、能力を引き出してあげてください。AIに頼らず、AIを利用しながら、あなたの言霊を磨くのです。年末年始のお年玉にいかがでしょうか?