日本だけでなく世界の政治が激しく動いています。政治を動かしているのは「国益」という経済的要素が大きいですから、その結果として、好況になったり不況になったりします。果たして今はどちらなのか、悩ましいところです。
1985年のプラザ合意で日本は円高(つまり、ドル安)になることを容認しました。輸出産業は業績が悪化しましたが、輸入関連産業は物価が安くなり、潤いました。同時に大量に流入した資金は行き場を探して不動産、金融商品に向かい、世にいう「バブル景気」となりました。あまりの地価高騰に対する歯止めとして実施した総量規制によりバブルは崩壊し日本は失われた30年が始まりました。
この間、日本に起きた不況はどの程度あるか調べてみました。ここでいう「不況」の定義はGDP成長率がマイナス基調、景気動向指数(CI・DI)が悪化、有効求人倍率、完全失業率、企業倒産件数などの悪化要因、天変地異・コロナ等の社会要因を含めています。
① 1990年〜1993年:バブル崩壊(宮澤政権)で、バブル崩壊による株価や地価の急落、企業倒産、金融機関破綻、不良債権問題等による日銀の引き締めが引き金となって起きた不況です。
② 1997年〜1999年:アジア通貨危機・金融危機(橋本政権→小渕政権)で、1997年の消費税5%引き上げや橋本政権での構造改革、山一證券や北海道拓銀など大型破綻、タイのバーツ暴落から始まったアジア通貨危機、貸し渋りと貸し剥がし、企業のリストラが加速し、「金融再生法」など制度改革が始まった。
③ 2001年〜2003年:ITバブル崩壊・米同時多発テロ不況(小泉政権)で、米ITバブル崩壊(NASDAQ急落)、構造改革「痛みを伴う骨太改革」、株価下落・失業率悪化、銀行の自己資本規制強化、コスト削減・リストラ推進が進み、不良債権処理が加速した時期。
④ 2008年〜2009年:リーマンショック不況(麻生政権→鳩山政権)で、リーマンショックによる世界同時不況、自動車を中心に輸出が激減、GDP成長率マイナス -5.4%(2009年)、大企業中心に減産・派遣切りが始まり、円高進行による製造業への打撃が大きかった。緊急経済対策でエコカー減税、定額給付金が実施されました。
⑤ 2011年:東日本大震災(菅政権)で、東日本大震災→原発事故(福島第一原発)、電力不足、サプライチェーンの混乱で製造業が生産停止、物流も停滞、観光や消費も低迷した。
⑥ 2014年〜2015年:消費増税ショック(安倍政権)で、2014年4月の消費税8%へ引き上げ、円安による輸入物価上昇と実質消費の急減、個人消費低迷することでGDPマイナス成長(2014年Q2・Q3)、アベノミクスの勢いにブレーキがかかり、企業の設備投資も伸び悩みました。
⑦ 2020年〜2021年:コロナパンデミックによる世界的景気後退(菅政権→岸田政権)で新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言と外出自粛。インバウンド・サービス業壊滅、同時に観光・外食・航空が青色吐息、失業率上昇、GDP年率 -28.2%(2020年Q2)、大規模な財政出動(GoToトラベル&イートや給付金等)、リモートワークが普及しDX化を促進されました。
⑧ 2022年〜2023年:ウクライナ・ロシア戦争(岸田政権)で、ロシアのウクライナ侵攻による資源高、円安進行、物価上昇と実質賃金低下、物価上昇と景気後退が同時に起きるスタグフレーション傾向が出てきた、消費者心理の冷え込み、マイナス金利解除し金利のある世界に戻りました。
このようにみてくると、数年ごとに不況が起きていることがわかります。これは総論です。不況だからどの会社も苦境に陥っているかといえばそうではなくて、産業や業種や地域や企業規模や企業特性等の置かれている状況によって、環境適応から環境先取りをして、工夫に工夫を重ね、成長している企業もたくさんあります。
記憶に残っているだけでも、不況でも安定需要のある産業機器にシフトし自動化や省人化に強いキーエンス、「お値段以上」の価格訴求したニトリ、コロナ禍の巣ごもり需要を活かしたメルカリ、任天堂、フリースを開発しSPAで価格破壊を実現したユニクロ、yahooとLINEを統合しデジタル決済を強化したZホールディング・・・ほかにも枚挙にいとまがないほど多くの企業が不況期に成長しています。
これらの企業に共通しているのは環境「適応」から「先取り」する思考やコア事業のとことん磨き込んで唯一無二のノウハウにしたり消費者の心理変化を読み取った先手マーケティングがあります。
需要がないなら創造しよう、強い会社に構造改革しよう、自社にないなら外部資源を活用しようという柔軟な発想が功を奏しているように思います。
経営の神様と言われた松下幸之助師の「不況心得十訓」を思い出しました。時間のある方は味わってください。
1.不況といい好況といい人間が作り出したものである。人間それを無くせないはずはない。
2.不況は贅肉を取るための注射である。今より健康になるための薬であるからいたずらにおびえてはならない。
3.不況は物の価値を知るための得難い経験である。
4.不況の時こそ会社発展の千載一遇の好機である。商売は考え方一つ、やりかた一つでどうにでもなるものだ。
5.かってない困難、かってない不況からはかってない革新が生まれる。それは技術における革新、製品開発、販売、宣伝、営業における革新である。そしてかってない革新からはかってない飛躍が生まれる。
6.不況、難局こそ何が正しいかを考える好機である。不況のときこそ事を起こすべし。
7.不況の時は素直な心で、お互い不信感を持たず、対処すべき正しい道を求めることである。そのためには一人一人の良心を涵養しなければならない。
8.不況のときは何が正しいか考え、訴え、改革せよ。
9.不景気になると商品が吟味され、経営が吟味され、経営者が吟味されて、そして事が決せられる。従って非常にいい経営者のもとに人が育っている会社は好況のときは勿論、不況のときにはさらに伸びる。
10.不景気になっても志さえしっかりと持っておれば、それは人を育てさらに経営の体質を強化する絶好のチャンスである。