No.1331 ≪経営の黄金律≫-2022.10.5

21世紀経営クラブ≪経営の黄金律≫-2022.10.5  目加田博史

目加田経営事務所では「経営の黄金律」を提唱しています。様々な会社の経営コンサルティングに携わらせていただく中で、うまくゆく会社とつまずく会社があります。もっと端的に言えば、優れた経営者と蒙昧な経営者がおられます。会社経営をすると景気・不景気、成長業種・構造不況業種、運・不運等の外部環境の影響を少なからず受けますが、ほとんど業績の善し悪しと関係ありません。もちろん一つの要因かもしれませんが、本質ではありません。業績が悪い時は外部環境のせいにしたくなりますが、それは言い訳にすぎません。約40年にわたり500社以上の会社、経営者、幹部、社員の方々とかかわらせていただく中で、うまくいっている優れた経営者には共通した思考があることに気づき、それを法則化し、「経営の黄金律」と名付けました。黄金律の逆を実行すれば会社は不具合が生じて、苦境に陥り、最悪の場合は消滅します。とても再現力の高い法則ですので、科学性があります。世界秩序が崩壊し、戦争が勃発し、2桁インフレが蔓延し、金融危機前夜のような不透明で不確実な今こそ再認識が必要だと思います。
「経営の黄金律」は次の9つのルールから成り立っています。

1.市場はいつも豊穣 2.原因自分論 3.過去と他人は変わらない未来と自分は変えられる 4.解決策は社内にあり 5.すべての仕事はサービス(ホスピタリティ)業に進化する 6.サービス業は顧客満足度の追及なり 7.顧客満足度は社員満足度で決まる 8.いつも「素明研一即行」 9.ビジョンは実現する

順番に解説します。
1.「市場はいつも豊穣」
人が2人以上いると必ずコミュニケーションが発生し、ビジネスが生まれます。ビジネスは営業マンならだれもが知っている「5不」(不満、不安、不足、不便、不快)を解決することが起点です。例えば、生活する上で衣食住は安全欲求を満たす基本中の基本です。衣服だけとっても仕事着、普段着、おしゃれ着、子供服、女性用、男性用、下着、小物、靴下、靴・・・無数にあります。しかも、男性用、女性用、大人用、子供用、幼児用・・・性別、年代、体形、用途によって無数にあります。これらのビジネスにかかわる会社や人をまとめたものが業界や市場と言います。人がこの世に存在している限り、人のニーズを満たす、つまり「5不」の解決を提案する限り、ビジネス、つまり市場は衰退したり消滅したりすることがありません。消えるどころかますます拡大してゆきます。だから市場はいつも豊穣なのです。たとえ日本の人口が減ろうが世界の人口は増えています。市場が悪い、構造不況業種だと嘆く経営者は単に好奇心と探求心と創造力と工夫と挑戦する勇気が若干不足しているだけで、ほんの1mm考え方を変えれば「なんとありがたい市場だ」と感謝すること間違いありません。溝のあるレコードが姿を消しCDが登場しました。CDが姿を消しIpodが登場しました。デバイスの流行りすたりはありますが、音楽を聴きたい人のニーズは一向に衰えていません。

2.「原因自分論」
では、いつも豊穣な市場で業績を上げられない原因は何か? 提供する製品やサービスがニーズを満たしていないのか、取り巻く環境が悪いのか、景気が良くないのか、買わないお客様が悪いのか、社員の働きが悪いのか。
いいえ、経営者が悪いのです。うまくゆかないすべての原因は経営者自身、つまり「自分」にあります。それ以外は言い訳であり、愚痴であり、努力不足の表明にすぎません。下座業で自分を磨き、現地現場現物を知り、お客様と会い、売り物を磨き、幹部や社員の意見を尊重し、任せ、成功するようサポートする。うまくいったときは幹部・社員のおかげ、うまくいかない時は自分の努力不足です。原因を自分以外に探している間は、会社も業績も良くなりません。トップの発言は特別です。言霊のパワーが違います。柔和な笑顔と丁寧な言葉使い、和顔愛語と言いますが、これに努め、マイナス言葉は飲み込んでプラス言葉しか使わない。そんなトップにはプラスエネルギーが寄ってきます。しかも尾ひれをつけて、団体でやってきます。眉間にしわを寄せて、厳しい言葉ばかり使っているトップには、マイナスエネルギーが大喜びで飛んできます。すべて、「自分」に原因があり、結果としてのプラスとマイナスがあるだけです。

3.「過去と他人は変わらない 未来と自分は変えられる」
過去を変えることはできません。タイムマシンが発明されればわかりませんが、過去を変えれば現在も変わってしまいますから過去を変えることが良いかどうか疑問です。そして他人も変わりません。変えられると思っている経営者がなんと多いことか。ご心配なく、人は変えられません。変えられると思っている方に質問です。「誰かに変わりなさい」と圧力をかけられてあなたは変わりますか? 変わらないでしょう? それはなぜですか?
たとえ変わっても一時的な面従腹背ではないですか? だから人は変えられません。しかし、自由に変えることができるものが2つあります。一つはこれからのあなたの未来です。今の選択が未来を変えてゆきます。だから良い選択をすることです。楽な選択ではありません。良い選択です。自由に変えられるもう一つは自分自身です。自分から「変わろう、変えよう」と思えば、簡単に変えられます。そして、とりあえず3か月継続するのです。すると不思議です。今まであなたが変えようとして口酸っぱく説教しても、あんなに頑固に変わらなかった人が、あなたの変身によって、みるみる変わってゆくではありませんか? ほとんどの方は自分を変えたいと思っているのです。しかし、変えさせられたいとは思っていません。その時に、あなたの変化を見て、私もやってみようかなと思う気持ちが芽生え、実行に移します。すると、何と心地よいことか、なぜもっと早くやらなかったのかと悔しがります。頭と心が納得すると人は変わるのです。

4.「解決策は社内にあり」
豊穣な市場で業績を上げられない、うまくゆかない原因が自分自身にあることに納得すれば、うまくゆかない原因を外部の取り巻く環境や幹部や社員に求めていたことが真因だったと気づきます。誰かが、あなたの会社に忍び込んで業績悪化の地雷を埋め込んだわけでもありませんし、社会があなたの会社に狙いを絞っていじめているわけでもありません。自分でうまくいかない原因を作ったのですから、それを解決する具体策も社内にしかありません。ある幹部が会議の席上「今年の長雨は異常で商品が売れません。だから業績が悪いのです」と報告しました。社長は「わかった。君の給与も異常な長雨のせいでカットしよう」と言いました。別の幹部は同じ状況にありながらやり方を工夫して業績を上げていたのです。

この続きは来週にご期待ください。