No.1286 ≪経営と数字の良い関係を求めて≫-2023.11.8

経営に目標数字はつきものです。会社を機関車に例えると、経営方針は線路のようなもので経営目標は目的地です。経営目標は5W2Hで細かく数字化することで達成する可能性が高まります。

チームのAさんが工夫して成果を上げます。Aさんは成果が見えるので面白くて楽しくてしかたがありません。イキイキしてさらに工夫する姿を見ていたBさんが自分もやってみようと踏み出します。成果が出てきました。Bさんも仕事が楽しくなりました。すると、皆がそれぞれの持ち場で取り組むようになりました。驚くような成果が出ました。「楽しい」「面白い」から笑顔満面です。いやがうえにも一体感が高まり、達成感と自信があふれ、より上の目標に挑戦したくなります。
やることなす事とんとん拍子に進み、まるで何かの見えない力に導かれているように、思いもしない良いことが次々に重なり、期待していなかった案件が決まり、あっという間に目標達成してしまうことがあります。

一方、Cさんはやる事なす事がうまくゆかず、次々にキャンセルされ、内定が延期になり、特命案件が消滅し、挙句の果てには契約していたものまで破談になってしまいます。「泣きっ面に蜂」「弱り目に祟り目」のことわざのように、やればやるだけ空回り。アクセルをふかせばふかすだけスリップしてうまくゆきません。数字でミエル化しているので良くない結果が一目瞭然です。「何か私が悪いことをしましたか?」と天に愚痴を言いたくなり、神社でお祓いしたくなります。一人の不調はチーム全体に伝染してゆきます。

人は数字のおかげで強くなり、数字によって弱くなります。数字は人と時と場合によって極めてメンタルなものです。さらに、目標が具体的であればあるほど良い場合は良い方に、悪い場合は悪い方に増幅されてしまいます。数字だけにこだわってうまくゆかなかった経験を皆さんは嫌というほどお持ちではないですか? 私は沢山持っています。かっての日本の超名門優良企業の東芝が転落するきっかけは、ある役員が経営目標にこだわり帳尻合わせを要求し、それを忖度して社員が合理化するために不正に走ったからでした。

数字はうまく使えば人や会社を成長させる上でこれほど強力な武器はありませんが、使い方を誤るととんでもない凶器になってしまいます。「できる自分」にも「できない自分」にも自己洗脳する力を持っている人間の本質を理解することが経営者の仕事です。学年にこだわらず「100点満点」取れるところから始める公文式は自信の相乗積でスーパーヒーローを作りますが、学年にこだわったやり方をすると秀才もダメダメの相乗積で自信を無くして鈍才になってしまいます。だれもがタフなロボットマインドを持っているわけではありません。

目標達成したことのない会社を私が支援する時は「公文式」を勧めます。例えば、粗利益2億円の会社があるとします。目指す目標はVW(2倍、3倍)、すなわち粗利益6億円以上を目指します。しかし、年度は粗利益2億円とします。すると、10か月で目標達成する場合が多いです。決算賞与が支給できます。翌年の経営目標も粗利益2億円です。すると第3四半期で達成してしまいます。決算賞与はさらに多くなります。自信が顔に出ます。今までは「言い訳オーラ」を発散していた社員が「イケイケオーラ」に変わっています。3年目の経営目標は・・・。

一方、努力すれば達成できる目標、例えば昨対5%UPの2.1億円の経営目標は実は相当厳しい目標なのです。できて当たり前で言い訳できないプレッシャーが大きいのです。小さな躓きから数字に追いかけられるようになり心に遊びも余裕もなくなってしまいます。待ってましたと「言い訳オーラ」が全開します。

VW(2倍、3倍)は通常のやり方では到底達成できませんね? だから開き直って遊ぶことができるのです。ダメモトでなんでもチャレンジできます。失敗大歓迎です。独りよがりもOK。そうやってチャレンジして、振り返ってみると不思議といい線行っていることが多いのです。強いから勝つのではなく勝つから強くなるのです。「私って結構できるじゃない」と無意識に自己洗脳しています。人間の持つ「思い込み」の力はものすごいものがあります。世にいう「火事場のバカ力」です。

それが、失敗を許されない状況に追い込まれ「〇〇するべき」「〇〇しなければならない」と考えてしまうと本来持っている力が半分も出ないのです。ネガティブな思い込みの怖さを事例で紹介しましょう。

オランダで行われた「ブアメードの実験」(1883年)をご存じの経営者の方も多いと思います。
「目隠しされてベッドに縛り付けられた囚人ブアメードを囲んで沢山の医師団が人間はどの程度の血液が失われればどうなるか実験をしようと相談します。話し合いの結果「体重の8%が血液だから、その30%が失われると死にます。ブアメードは体重80kgなので血液は約6.4L。約2L出血すると死ぬと思われます」という結論に達しました。「では実験をはじめよう」といって、ブアメードの足の親指にメスを入れました。床に置いた容器に血液が落ちる音がします。医師団は定期的に失血量を声に出して確認します。「まもなく2Lになります」とある医師が報告しました。それを聞いた囚人ブアメードは静かに息を引きとったというのです。実は、医師団はブアメードの足にメスの背で痛みだけを与え、スポイトを使って水滴を垂らしていたのです。囚人ブアメードはどこも傷付けられず出血もしていませんでした。」

また、実験ではありませんが同じような事例があります。アメリカの運送会社の作業員が冷凍車の中に入って作業をしていた時、運転手が中に人が入っているとは知らず扉を閉めて鍵をかけ車を走らせました。翌日、作業員は凍死状態で発見されたそうです。しかし、冷凍車の電源は切られていました。作業員は温度がどんどん下がってきたと思い込み凍死してしまったのです。これも思い込みです。

経営者は数字を武器にして社員が「イケイケオーラ」を発散できるように、ネガティブは思い込みを封印し、ポジティブな思い込みで仕事が楽しくて仕方がないように仕向けてあげてください。賛否両論ありますが「公文式」は一つのやり方だと思っています。