No.1252 ≪2024年問題は成長のきっかけかも!≫-2023.3.16

2019年4月1日よりに悪法(と私は今でも思っています)「働き方改革関連法」が施行され、早いもので4年になります。2024年にはすべての企業に適用されます。企業規模や業種による特例措置がなくなります。これを「2024年問題」と言います。悪法も法ですので、日本で事業を営む経営者たるものこれを遵守しなければなりません。後は智慧の勝負です。
この法律による時間外労働の上限について適用が5年間猶予されたり特例つきで適用される事業や業務は「工作物の建設の事業」「自動車運転の業務」「医業に従事する医師」「鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業」となっています。

それぞれの事業で工夫が凝らされていると思います。中には手の打ちようがなかったり、利益が出なかったり、事業そのものが立ち行かなくなる会社もあるかもしれません。長時間労働するだけでブラック企業と言われていますが、これが地下に潜りアンダーブラック企業も出てくるでしょう。しかし、そこでもう一歩、思考を進めてみませんか? 本当にできないのか、無理なのか?

しかし、モノは考えようです。これを機に、ゼロベースでやり方を見直してみようと考えている企業が多いと思います。テレビの特集でも様々な企業の事例が取り上げられていますので大いに参考になると思います。
その中の一つに、物流企業が実践している「スワップトラック」(別名バケツリレー)があります。

例えば東京〜大阪間のトラック貨物輸送を考えると、従来は運転手が大阪で荷物を積んで東京まで運び、翌日、東京で帰り荷を積んで大阪まで運ぶという長時間労働を強いられていました。
新しいやり方では、大阪から浜松サービスエリアまで行き、そこでコンテナを外し、東京から来たトラックのコンテナに積み替えて大阪に戻るのです。東京から来た運転手はその逆をやります。すると、車中泊や出張先で宿泊することなく日帰りすることができます。
これにより短縮できる時間は一人当たり年間480時間だそうです。ドライバーは体力の消耗も少ないので体が楽だし、事故の確率も激減するでしょう。それよりもっと良いことは家族との時間がたっぷり作れることです。
会社はコンプライアンスをクリアするだけでなく、家庭の幸せも創造しているのです。なおかつ人件費だけでなく様々な維持費がコスト削減できます。しかも、運搬業務量は変わりません。場合によっては時間短縮も可能になり、早く納品できる可能性も出てきます。

また、地方の長距離運送を主体にしていた企業が、基幹サービスの長距離輸送から撤退し、倉庫業を事業転換して成功している例があります。約20年前のメルマガ(2004年1月14日、1月21日、1月28日)でも紹介していますが、運送業は「走らないほうが儲かる」「タコメーターを回せば回すほど赤字になる」のです。しかも今回は長時間労働規制が絡みますので、ますます、走らない運送業が生き残るのです。
長距離輸送はドライバーに長時間労働で肉体的精神的重労働を強いるサービスです。過酷な労働の割には儲からない。どうすれば社員に長時間労働を強いずに安定業績を上げられるかと考えた時、倉庫業とのセットビジネスが生まれました。別に珍しいビジネスモデルではありませんが、運送業しかやってこなかった企業にすれば倉庫業は全くの素人商売の後発参入になります。全国から集まる荷物を倉庫で荷捌きして域内に配送するやり方です。大幅に労働時間短縮ができて、皆が喜んでいるそうです。

いままで、なぜ思いつかなかったのかとも思いますが、もし、思いついてもそれを実行に移すには取引先の理解や設備投資を含めて大きな勇気が行ったことでしょう。働き方改革関連法という悪法が施行されたがゆえに、コンプライアンスを遵守するために知恵が出てきたと言えます。さらに、同じ悩みを持つ同業者と共同で拠点となるサービスエリアでスワップ事業を運営できればもっと大幅な業務改善が進むことでしょう。わが社だけの利益向上や改善の固執するのではなく業界全体の問題解決を図る。それによって社会的にも大きな改善が進む。ドライバーの定着が良くなる。SDGSの実践でカーボンオフを推進できる。化石燃料の削減ができる。他にもまだまだメリットが出てくるのではないでしょうか。
江戸時代の経営コンサルタントの一人石田梅岩が説いている「先義後利」の実践例です。

一見、とんでもない苦境、行き詰まりに見えるかもしれませんが、必ず突破できるのです。私たちももっともっとゼロベースで知恵を出さねばなりません。なぜこのようなやり方をしているのか、もっと簡単にできないのか。

一緒に考えてみませんか?