No.1158 ≪経営者を狙う「ポンジ・スキーム詐欺」≫-2021.4.21

経営者の皆さん、お金のある方もない方も要注意です。今はある種のコロナ・バブルです。コロナ禍のマイナス金利の中で高利回りをうたい文句にした「投資詐欺」が横行しています。今流行しているのはチャールズ・ポンジが使った詐欺手法で「ポンジ・スキーム」といわれています。今ではボードゲームまで出ています。恐ろしいことです。このポンジ・スキーム詐欺は古典的なねずみ講とは異なり、詐欺の立証が困難でしかも数年たたないと発覚しません。発覚した時にはとんでもない金額の被害が出ます。

話題になったポンジ・スキーム詐欺事件の主なものを列挙してみます。
1つ目は、2009年に発覚したアメリカNASDAQの非常勤会長まで務めたバーナード・マドフが起こした「マドフ事件」です。マドフ投資会が舞台となった史上最大の詐欺事件です。誰もが知っている著名人や野村證券もものの見事に手玉に取られました。しかも、詐欺が発覚するまで25年かかりました。被害者は4800人で、被害総額はわかっているだけで6.5兆円です。服役中にマドフ氏が詐欺被害者と同房になり鼻骨や肋骨を折られたことがありました。その方はよほど損をして人生が狂い刑務所に入ったのではないかと想像します。

2つ目は、2019年12月に発覚した「Bitclub事件」は被害者(本人は被害にあったと思っていないかもしれない)は世界中におり、被害総額は約800億円。ビットコインのマイニングには巨額の設備投資が必要ですが、Bitclubに投資すれば集まった資金で設備投資をしてマイニングします。その成果を配当するとして世界中から投資家を集めました。一見ハイテク・ビジネスモデルの一つのように見える現代の詐欺商法です。運営者3人が逮捕され、全容は調査中です。

3つ目は、2019年に発覚した「プラストークン事件」もビットコインがらみの投資詐欺です。わかっているだけで被害者は約1000万人、被害額は約4000億円以上です。謳い文句は「仮想通貨を預けてくれれば、AIを使った取引で月利10%の利益を出します」といい、配当は年利にすると120%とあり得ない高額です。逮捕者は109人に上り、中国当局が差し押さえた資金は約4200億円に上るようですが、中国の国庫に入るようです。

4つ目は、2011年に破綻した「安愚楽牧場事件」で、和牛オーナーになりませんかという投資詐欺です。被害者約7万人、被害額は約4300億円。「最高利回り13・3%、元金保証でこれだけの実績があるのはたいしたものだ」と経済評論家で後に民主党の大臣にまでなった方が議員になる前に推奨し、話題になりました。

5つ目は、1996年に倒産した「オレンジ共済事件」は国会議員の友部達夫氏の政治団体が運営していた共済団体で、利回り6.5%をうたい約93億円を集めました。その後も議員に居座り歳費1.6億円が支払われた。但しこの歳費は被害者団体に差し押さえられました。

他にもたくさんの事例があります。ご興味のある方はネットで「ポンジ・スキーム」で検索してみて下さい。
どれも発覚するまでは、素晴らしいビジネスモデルの成功例として評価されているのです。怖いですね。
仕組みは簡単で、出資させた資金を使ってほかの出資者の配当に回しているだけです。みせかけの投資や事業を行っていますが、出資金を売上計上して配当金を支払計上していかにも巨額の利益が出ているように見せかけているだけです。元金を返すつもりがないのでこんなことができるのです。元本の償還が始まると一気に詰まります。いわゆる自転車操業で、出資金を集め続けないと続きませんのでいずれ破綻することは目に見えています。

ポンジ・スキームで共通しているのは、「①20%以上のあり得ない高利回り ②少額(100万円程度)から始められる ③元本保証。但し、2年以上の長期間元本の解約、償還、譲渡、売却が不可能 ④紹介による勧誘で、紹介すれば手数料が支払われる ⑤勧誘主宰者の経歴が不明」の5つです。そして、「詐欺罪」として立件することが極めて困難です。「だますつもりはない」と主張すれば立証は困難です。

そして、不思議なことにほとんどの人がものの見事が騙されるのです。
なぜかといいますと、
「私が実際にやってみて驚いたマル秘投資法があるんです。特別なあなただけにお話しするんですが、まずは1口から始めてはどうですか」と友人を通じてあなたに近づいてきます。その方は聞いたこともない会社だし、出資する会社も聞いたことがありません。「今時そんなおいしい話があるなんて信じられない」というと、「私も最初はそう思いました。マイナス金利の時代に30%配当なんて詐欺だと思いました」といいます。

ちなみに2021年4月16日時点で配当率ランキング1位は「日本アジアグループ(株)」の32.19%で、2位はエイベックス(株)の8.21%です。

念のためホームページで検索すると勧誘会社も投資先の会社もちゃんと掲載されています。友人の紹介でもあり断り切れず1口だけ申込みます。すると最初は約束通り高配当が口座に振り込まれます。2回、3回と実際に振り込まれるとほとんどの人は信じてしまいます。これが撒き餌段階です。そして、次第に口数を増やしてゆきます。あっという間に残高は数千万円になります。それでも配当金が振り込まれます。まだ撒き餌段階です。
「今時こんな儲け話が本当にあるんだ」と信じ込んだ出資者は、友人・知人にそれとなく自慢します。「俺はこんなに商才があるんだ」といわんばかりに。
最初は疑っていた友人・知人も銀行通帳を見せられ、恐る恐る数口出資します。やはり配当が振り込まれます。すると、口数が増えてゆき、資産のほとんどをつぎ込むようになります。場合によっては借金して出資します。2%の利息で借金しても20%配当があるのだから大丈夫と思うのです。

そして、いよいよ佳境に入ります。1年ほどたつと、勧誘者が、「今度ある大手企業(実際の固有名詞をいって)から特別調達の依頼を受けていて、近々募集が始まります。マスコミでも報道されたからご存じでしょうが、海外の大きなプラント開発を行うための調達です。もちろん元本保証で、配当は若干低くなるけれども10%以上は確実です。ただ、大型プラント開発なので元本は5年縛りになります。1口1000万円で、10口以上からの募集で、出資者は500名以内に限定されています。当社は特別に少額の5口から出資できる特別優先予約権を10名許可されています。後2人で締め切りになります。社長は特別ですのでお声掛けさせていただきました。出資されませんか。」と持ち掛けてくるのです。過去の実績もあり、信用しきっていることと特別扱いされて気を良くしているので、その場で申し込んでしまいます。撒き餌効果抜群です。
しばらくすると、突然配当金の振り込みが止まります。問い合わせてもあれやこれやと言い訳をし、一部分が振り込まれます。しばらくして再度問い合わせると、電話は不通。訪ねた住所はもぬけの殻。勧誘者はもちろん行方不明。残るのは巨額の借金だけ。欲の皮が突っ張るとこうなるのですね。恐ろしいことです。

撒き餌段階にいる方はバラ色ですが、数年後には地獄を味わいます。くれぐれもお気を付けください。元本保証のはずですが、元本が戻ることはおそらく99%以上の確率でありませんので。
楽してお金儲けをしようと思う心が、彼らの絶好の餌食なのでしょうね。