No.1102 ≪トップしかできないトップの決断≫-2020.2.27

2週連続で新型肺炎の話題です。
2月25日に政府の専門家会議の結論として「新型肺炎の爆発的流行のピークを抑制するうえで、ここ1~2週間が正念場だ。不特定多数が集まるイベントや集会自粛を要請する」方針が採択され発表されました。
やっと一国のリーダーである安倍首相の顔が見えてきました。1月末の武漢市へのチャーター機派遣から4週間近いトップ不在、リーダー不在、官僚任せの「言葉明瞭 意味不明」会見は人災と言われても仕方がないと思っています。
クルーズ船問題に至っては、「船籍はイギリス、経営はアメリカ、従業員や乗客は多国籍という多言語の外交問題の中で、政府はよくやっていると思いますよ」という専門家のコメントに至っては開いた口がふさがりません。4人の方がなくなり、709人が船内感染し、各国がチャーター機で自国民の乗客を救援にくる事態が「よくやっている」とは到底思えません。
反省すべきは反省し、必要な対策を勇気をもって実行しなければならないのではないかと思います。
このような弁解がまかり通るのであれば、だれも苦労はしません。

「倫理法人会」という組織をご存じでしょうか? 会員は約7万社、支部は全国に680支部あります。民間の一社団法人としては大規模な部類に入る組織です。私は沖縄県那覇市倫理法人会に所属していますが、それぞれの支部で毎週6:00~7:00の1時間、経営者モーニングセミナーを開催しています。
会員対象の月刊誌「職場の教養」の発行部数は月間195万部に上ります。
この組織が「2週間にわたり全国でのモーニングセミナーを中止」しました。新型肺炎の感染防止のためです。倫理法人会の歴史は75年になりますが、この決断は初めてのことです。
その後、Jリーグはじめ、各組織が続々と中止、延期、無観客試合を決めるなど、ほとんどパンデミック状態です。

ウイルス感染が収束するまでの期間とはいえ、インバウンドの激減だけでなく、国内での経済活動が制約されると、GDPの約55%を占める個人消費に影響が出てくるのは覚悟しなければなりません。
今年はオリンピックイヤーですので4000万人のインバウンドを見込んで設備投資や人的投資を済ませた企業が多く、業種別でみれば宿泊・飲食サービス業、流通業、交通機関等の企業は大変な事態に陥ることでしょう。すでに倒産やリストラが現実化しています。

さらに、パンデミックで世界中のサプライチェーンが分断される可能性が一段と高くなったことです。世界の工場と言われた中国で生産ができていないため、セットメーカーは操業停止状態になりかねません。昨日もトイレのエアータオルを設置するために工事会社に見積もりを取ったところ、「メーカーから『中国部品が来ないので納期がわからない』といわれているので、いつになるかわからない」とう回答がありました。このような小さな停滞が随所で発生し、全体としては機能マヒが起きてくる可能性が高くなります。
来る日も来る日も報道番組で新型コロナウイルスの恐怖が伝えられ、視聴者が心理的に体調を崩したり、思い込みで不安に駆られて病院に行く人が増えると思います。医療機関では保健所に伺いを立て、保健所は地方自治体に伺いを立て、地方自治体は厚労省に伺いを立て、許可が下りて初めて検査できる仕組みなので、ほとんど検査すらしてもらえない。
重症化して入院しないと検査してもらえないという異常事態が起きています。うかつに検査をして感染者を増やすと隔離施設のある病院が限られているので、対応できない。一般病院まで開放すると今度は院内感染やキャパオーバーで医療崩壊が起きかねない。このような危機が迫っています。

私は経営コンサルタントという職業柄、数多くの「人の上に立つリーダー」「経営者の決断」を見てきました。
なるほどと思う決断もあれば、首をかしげたくなるような決断もあります。時期尚早もあれば、遅きに失した決断もあります。決断はいかに本質を突いた現状認識をするかで決まります。
状況が完全に把握できていないなかで、行わねばならない決断は、きわめてむつかしいものです。それができるのはトップだけです。
「多数決で決めたから」だれの責任でもないというのは無責任です。多数決で決めようが、独裁的に決めようが、すべての責任はトップにあります。同じ責任を取らされるなら独裁の方が良いという考え方は間違いです。多くの知恵を結集して、会して議する。議して決するのが民主主義の本分で、最終の決断はトップしかできません。

今回の4週間の空白期間はなんら決断がなされず、トップ不在だったように思います。このような状況にあることを理解して私たち経営者はいかに決断をしなければならないかが今度は問われます。
今は、見えざるウイルスに対して、明らかに戦時の決断が求められているのです。