No. 1328 ≪攻撃は最大の防御なり≫-2024.9.4

迷走台風10号の被害はございませんでしたか? お見舞い申し上げます。

よりよい社会を創造すべく宇宙は光と同じように常に一方通行で生成化育し進化し続けています。常に挑戦し、常に変化し、常に前進しているのです。これは今も宇宙が膨張を続けていることが科学的に証明されていることからも明白です。宇宙の子である私たち人間にも同じシステムがビルトインされ、生きている間は進化し続けることが義務付けられているのです。人類が誕生して20数万年たちますが、いつも様々な脅威や猛威が襲ってきました。その都度、人智を超えた事象には共存を、人智内の事象には犠牲をものともせず知恵と工夫でチャレンジした成功と失敗の歴史があります。

「攻撃は最大の防御なり」という言葉をご存じですね? 出典は孫子のようですが定かではありません。この言葉には前段があります。「勝つべからざるは守るなり、勝つべきは攻むるなり」つまり、勝てない相手の場合は守りを固めよ、勝てると確信を持てば攻めよと言っています。孫子の兵法の奥義は「兵は詭道なり(軍事は騙し合いだ)」で、戦わずして勝利することです。少なくとも負けないことです。
「攻撃は最大の防御なり」は意表を突いた先手攻撃で相手にダメージを与えるから最大の防御になるととらえがちですが間違いです。国も会社も永続するために戦うのですからゲリラ的に攻撃して一時的に勝利を収めても反撃にあって全滅させられたのでは意味がありません。
自分の急所や弱いところを熟知して守りをしっかり固めておれば相手をじっくり観察する余裕が生まれます。すると相手がどう攻めてくるかが見えてくる。相手も試行錯誤しながら攻撃してきますが守りがしっかりしているので攻めあぐねる。すると相手の体制に迷いなり何かしらの隙や齟齬が生じる。その隙を機敏に攻める。小さな力で大きな相手の体制が崩壊する。勝てないまでも負けない。うかつに戦う相手ではないと判断した場合は相手と同盟を結ぶ、利益共同体に持ち込む。これが巷間「攻撃は最大の防御なり」と言われている本来の意味ではないかと思っています。
「悲観的に準備して楽観的に行動する」という格言と通底しています。

これを企業経営に置き換えるならばどうなるでしょうか。
「彼を知り我を知れば百戦危かず」のことわざの如く、まず、わが社の真の競合先を見極め、その強み、弱みは何か、弱点はどこかなどを徹底的に情報収集し分析する。次に、わが社の強み、弱みは何かを徹底的に分析する。そのうえで顧客は何を求めているかを分析することです。
わが社の弱い部分を強くするには時間と資金と人材が必要で、一朝一夕には解決しません。その間に競合先から攻め込まれてはひとたまりもありません。
例えば、ある製品の納期が競合先は標準2か月、わが社は最短3か月の場合、勝つには特急品対応する方法がありますが、現場が疲弊して不良品が出たり、設備不良で納期がさらに長期化しかねません。生産システムが根本的に異なる場合は別の考え方が必要です。勝てる条件、つまり、わが社の生産システムの強みをフルに生かせる特定の製品群を設定することで競合先よりはるかに早い納期を実現するのです。
わが社より経営規模の大きい会社と値下げ競争するとアリ地獄に陥り消耗戦のあげく自滅します。消耗戦は体力勝負で、中小企業はなんとしても避けるべき戦い方です。消耗戦は誇りも尊厳もなくなりモチベーションは地に落ちて惰性仕事になります。競うべきは「非価格創造力」です。わが社の守りを固めて、じっくり競合先を観察していると、隙が見えてきます。例えば、何らかの事情で経営方針が変更になったり、担当者の変更により顧客との相性やコミュニケーションに変化が生じて融通がきかなくなってくることがあります。顧客に不満がたまっている兆候を発見すれば、俊敏に不満を解消する提案を行うのです。

また、社内に目を転じると、多くの会社で朝礼を行いますがやり方が変わらず惰性の象徴になっている場合があります。ある会社では「職場の教養」を使って当番リーダーの進行で社員が朗読し、当番リーダーが感想を言って締めくくるのですが、朗読する人が固定化してしまい、活気がありませんでした。社長がなんとかできないかと皆に相談したところ「くじ引き」アイデアが生まれました。当番リーダーが「くじ」を引いて朗読するグループ、例えば「眼鏡デー」「役員デー」「20代デー」「〇部門デー」等を決めることにしたのです。すると、どのくじが当たるかわからないのでヒヤヒヤドキドキ緊張しながらも皆が楽しんで積極的に朗読を始めるようになったのです。少し視点を変えると無用の長物と思っていたものがとても新鮮な活気ある仕組みになったのです。

ある方から次のような標語をいただきました。タイトルは「事業に失敗するコツ10箇条」です。「1.旧来の方法が一番良いと信じている。 2.もちはもち屋だとうぬぼれている 3.「ひまがない」といって勉強しない 4.むやみやたらと骨を折る 5.「どうにかなる」と考えている 6.良いものはだまっていても売れると安心している 7.人を安く使うのが得だと思っている 8.支払代金はなるべく支払わぬ工夫をする 9.お客はわがまま過ぎると考えている 10.そんなことは出来ないと言って改めない」
なるほど!その通りだと思いました。

のろのろ迷走台風10号(8月24日発生~9月2日)には悩まされました。台風という自然の猛威には人間は勝てませんので守りを固めるしかありません。しかし、私の場合、お客様と情報共有しながら台風の進路の隙をみて移動すれば仕事はできます。飛行機とホテルと新幹線の予約を随時変更すれば可能です。台風発生の情報を入手したなら、「攻撃は最大の防御」精神で手を打てばよいのです。

自分も会社も仕事のやり方も製品もすべて今日より進化させる。昨日の自分に負けない事が宇宙の本質にかなっていると思います。