巷間「生活に深刻な影響を与える円安が止まらない」と話題沸騰して久しい。これもロシアのウクライナ侵攻がきっかけになっているので悪いのはロシアのような印象を受ける報道が多いです。
そもそも、どうなれば「円安」といい、どうなれば「円高」というかと言えば、昨日より1ドル(又は1ユーロ)の価値が高ければ円安となり、低ければ円高となる現象にすぎません。これは誰も理解していることです。
ではなぜ、このように大騒ぎをしているのかと言えば、安定を乱されて変化に適応せざるを得ないからだと思っています。思い起こせば第二次安倍政権が誕生した2012年ごろまで為替は1ドル78円〜86円という超円高でした。エネルギーはほとんど輸入でしたので、電気代もガス代もそれなりに安くなっていました。食品の価格も安く、安いことが良いことのような風潮がありました。一方、円高だとものづくり日本の基幹産業である輸出企業が作れども作れども儲からず、売れども売れども赤字になるという苦境に到り、それが日本経済を圧迫し、バブル以降「失われた20年」と言われ経済成長できませんでした。この苦境を打開すべくアベノミクスを掲げた第二次安倍政権が発足しました。日銀総裁に就任された黒田総裁は異次元の金融緩和を実施し、黒田バズーカを連発して、為替はじりじりと円安傾向となり、1年後には105円まで進みました。輸出企業は空前の好決算で史上最高の利益を計上しました。しかし、給与は一向に上がりませんでした。なぜなら、好業績は為替差益という計算上の利益であって社員の働きによるものではないという理由です。それが今も続いています。
もう少し歴史をたどれば、戦後は1ドル360円で固定されていました。朝鮮特需で好景気に沸き輸出で大いに盛り上がり日本は高度成長時代に入りました。しかし、長引くベトナム戦争で国力が衰微したアメリカが1971年に金本位制(ドル本位制)を放棄するというドルショックが起きました。その結果、為替は345円と15円近い円高になり輸出企業を中心に大騒ぎになりました。その後の2度にわたるオイルショックを経て1973年には1ドル271円の円高に、それによって日本も低成長時代に突入しましたが、アメリカの不況のあおりを受けて相対的に経済力が強かった日本は円高が進みます。そして、竹下蔵相が秘密会談に臨んで発表されたのが1985年のプラザ合意です。1ドル239円。翌年の1986年には1ドル169円と超円高となり、日本は空前の好景気となり「バブル経済」が到来したのです。すべての物価があがり、給与が上がり、住宅は高くて持てないので高級品がどんどん売れました。異常な海外旅行ブームが起きました。ルイビトンのカバンや財布が今までの半値で買えるのですから高校生でさえビトンの財布を持っていました。
ここで私たちは、コロナ禍で思考停止した頭脳をリセットして再活性しなければなりません。安岡正篤師の思考の三原則「多面的に見る、長期的に見る、根本的に見る」を思い起こしましょう。
また宇宙の本質は易で喝破されているように「天行健なり」(宇宙は常に進化し良いことしか起きない)です。自然の法則は「エネルギー不変の法則」です。良いこともあれば悪いこともあるけれどもおおむね±ゼロだということです。このような観点で為替を見ると様々なチャンスが待っています。
風邪で亡くなる人もいますが瀕死の重症者が長寿を全うすることがあります。借金だらけのぼろ会社を承継した経営者が大飛躍することがあります。一方、超優良企業をつぶしてしまう経営者もおられます。
今の円安という局面をプラスに変えるには、ブランド化と海外展開だと思います。誰もが欲しがる、1年2年予約待ちしてでも手に入れたい商品を作る。価格を気にしない方は無数におられます。日本におられる億万長者(ミリオネア)は126万世帯(約2%)もあります。世界を見るとビリオネア(10億ドル以上)を富裕層というそうです。フォーブス誌が2019年版のビリオネアが住んでいる都市のランキングを発表していますが、1位はNY(84名)、2位香港(79名)、3位モスクワ(71名)、4位北京(61名)、5位ロンドン(55名)、6位上海(45名)、7位サンフランシスコ(42名)、8位深セン(39名)、9位ソウル(38名)、10位ムンバイ(37名)だそうです。残念ながら日本は入っていません。1位NYに居住する84名のビリオネアの総資産はオーストラリアの国家予算を超えるそうです。
世界から信用され憧れさえされている日本製の製品を世界で販売する。例えば、10年以上前ですが、蘇州の新区の日本製品販売店で売られていた青森産りんご「ふじ」は5000円でした。それでもほしい人がいるのです。
日本の持っている製品や技術、品質、サービスは日本では正当な評価を受けていないかもしれません。日本で食べる一風堂の825円のラーメンは海外では2500円以上です。
どこから見るか、視点を変えれば見える景色は全く異なります。
思考の三原則を実践してみませんか?