天上界は6次元にあるという。天上界の説明をしてくれた。
「ああ、そうですね。ここは、天上界です。あなたは天上界に来たのです」
「天上界? どういうことですか? 私たちは大原野神社にお参りに来ただけです」
「おそらく、天上界につながる空間に迷い込んだのでしょう。大原野神社にはそういう空間があるのです。あなた方の感覚でいうと瞬間移動したみたいで、気づいたらここにいるという感じだと思います」
「まったく、その通りです。20人ぐらいの参拝者の後について参道を歩いていたんです。少し目を離すと前を行く参拝者がみんな消えていて、私たちは杉木立の中にいたんです。何が何だかわからないでじっとしていると、白い犬が現れて、私たちを道案内してくれるようなそぶりだったので、後をついてきたら、洞窟のような門のようなところがあって、そこを抜けるとまばゆい光の森の中に出たんです。白い犬を探したのですが、どこにもいなくて。とりあえず芳しい香りがする方向に道なりにゆくと、ここに着きました」
「不安だったでしょう?」
「はい、それはもう。子供がいますので、この子に何かあってはいけないと思ってなおさらでした。なんとかもとのところに戻らないと思って歩いてきました」
「ここは六次元界です」
「六次元界?」
「はい、六次元界です」
「三次元は理解できますが、六次元というと」
「簡単に言えば、四次元は時間がありません。五次元は空間がありません。六次元は物質がありません」
「ますますわかりません。時間がないというのは、どういうことですか」
「永遠です。ここには過去も現在も未来もありません。昨日も今日も明日も無いのです。時間がないということは光もありません」
「光がないというと真っ暗ということですか?」
「いいえ、明るさと光は違います。光は時間の単位で光粒子が集まったものです。明るさは心のなかで作り出しているイメージです。ここに来るまでに森があったでしょ? 光がさして陽だまりができていたと思います」
「はい、その通りです」
「あれは、あなたの心に、もっと言えば、意識に働きかけて作ったものです」
「よくわかりませんが、これ以上聞いてもわかりそうにありません。五次元というのは?」
「光明寺さん、わかろうとしないのはあなたの悪い癖ですねぇ」
「えっ? 今何とおっしゃいました? 初めてお会いしましたのに、どうして私の名前をご存じなのですか?」
「まあ、おいおい説明することもあると思います」
「いったいあなたは、何者なのですか! こことはどこですか!」
パニックになった光明寺をしり目に、その若者は話を戻した。
「五次元というのは、地理的な空間がありません。ですから、どこにでも瞬間移動できます。大原野神社は京都の西に在りますが、北海道も、ニューヨークもロンドンも瞬間に移動できます。勿論、宇宙も同様です。月にも火星にも瞬時に移動できます。あなたが大原野神社にお参りに来たのに、いきなり変な場所に来たのはそういうことです」
「なんとなくわかったようなわからないような。では、六次元は物質がないとおっしゃいましたが、あなたは20代の男性に見えますし、着物を見ておられますから物質があるのではないですか? 光粒子も物質ですよね?」
「いいえ、あなたがご覧になっているのは私が作り出したイメージです。実態は変幻自在のエネルギー体で、意識のようなものです。だから、どのような姿にもなれますし、姿を消すこともできます。ほらっ!」
と言って目の前にいた青年は消えてしまった。
「光明寺さん、私が見えますか?」
どこからともなく声が聞こえてきた。声というより、脳が感知しているような感じだ。隣にいる妻のしおりに(聞こえるか?)と目で聞くと、頷くので、聞こえているようだ。
「見えません。パッと消えたみたいに見えました」
「私の声というより意識があなた方の意識に働きかけているのです」
「仕組みはよくわからないですが、あなたの声は良く聞こえます。ところで、どうして私の名前をご存じなのですか?」
