樫の木の根元に何かが動いたような気配があったので、目を凝らしてみていると、人がベンチのような椅子に座っているではないか。
「しおり、あそこに人がいる。その人に聞いてみよう」
「ほんとだ。こんなところに人がいるなんて。聞いてみましょう」
近づいてゆくとその人は、朱色の作務衣のような上下の着物をきて、髪の毛は金緑色で、左右の耳の付近でみずらを作り、そのほかの髪の毛は背中まで伸ばしている。前髪は額にたらさずオールバックのような髪型になっている。足ははだしだ。年のころは20代ぐらいの若い男性で、何か作業をしているようだ。
光明寺は近づいて、
「こんにちは」とあいさつをした。
若者はこちらを振り向くと、ニコっと笑った。
「ようこそおいでくださいました」
と挨拶を返してきた。
「あのう、ちょっとお伺いしますが、よろしいでしょうか」
「はい、なんなりと」
「大原野神社にお参りに来たのですが、道に迷ってしまったみたいで困っています。どう行けばよいのでしょうか?」
「大原野神社ですか。神社は『隣の世界』です。(指をさして)ほら、あれですよ。あそこ。見えるでしょ?」
「はい、見えます。相当離れていますね。こんなに歩いてきたとは驚きました。先ほど『隣の世界』っておっしゃいましたが、どういうことですか?」
