NO.1375≪トランプインパクトは日本のチャンスを引き寄せる≫-2025.7.23でお伝えしたことがやっと最近話題になりだしました。関税の裏に隠れていた80兆円問題です。一部を下記に再録します。
「アメリカが先制して7月24日(日本時間)に関税協議の合意に関するファクトシートをホワイトハウスから公表しています。タイトルは「前例のない日米戦略貿易投資協定」です。開始時期や期限表示はありません。
何が「前例なき合意」かと読んでみると驚きました。まるで植民地に対する宗主国の振る舞いです。
「日本は、アメリカの中核産業の再建と拡大のため、米国の指示により 5,500 億$(約80兆円)を投資します。」
しかも、「その使い道はアメリカ側が判断し、投資先が日本企業でなくとも、得られる利益の90%はアメリカ側に帰属する」となっています。つまり、「約80兆円の米日投資ファンドを作り、資金は日本が出資しアメリカは市場を提供する。利益分配は米:日=9:1だ。失敗したら投資だから日本がかぶりなさい」という合意ですのでまさに「前例なき合意」となるのはもっともです。日本が投資(約80兆円)を回収するには投資した会社の利益を800兆円にしないと元が取れない約束です。まだまだ裏がありそうです。さらに驚くべき内容がありました。日本政府(内閣府)は7月25日に「米国の関税措置に関する日米協議:日米間の合意(概要)」を公表しました。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tariff_measures/dai6/250725siryou1.pdf
5500億$投資については「経済安全保障面での協力」という項目で次のように表現されています。
「日米は、日本企業による米国への投資を通じて、経済安全保障上重要な9つの分野等(半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI/量子等)について、日米がともに利益を得られる強靱なサプライチェーンを米国内に構築していくため、緊密に連携。日本は、その実現に向け、政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資・融資・融資保証を提供することを可能にする。出資の際における日米の利益の配分の割合は、双方が負担する貢献やリスクの度合いを踏まえ、1:9とする」
どこまで真実か外交文書が公開される50年後しかわかりません。
一方で、2025年1月22日にソフトバンク孫社長がトランプ大統領と会談し、5000億$(約75兆円)に上る「Stargate Project」を提案しています。(出所:https://group.softbank/news/press/20250122)
その概要はソフトバンク、OpenAI、オラクルが中心となってアメリカに5か所の大型データセンターを構築するというものです。勿論電力とGPUの確保が不可欠ですから、電力は原発もしくは宇宙発電所の建設が前提になります。GPUはNVIDIAを中心とした半導体企業です。財務面をソフトバンクが担当し、孫社長が会長になることが決まっています。OpenAIはデータセンターの運営を担当し、インフラをオラクルが担当するような内容です。
AI覇権を確実にしたいアメリカとすれば、日本との「前例のない日米戦略貿易投資協定」で政府系金融機関を通じて出資を約束させた5500億$(約80兆円)の使い道はアメリカが自由に使えますので「Stargate Project」に使ってももちろん構わないわけです。日本の資金で世界のAIインフラ覇権をアメリカが確保するという構図は、もしそれが事実なら見事な戦略というほかありません。
また、「マグニフィセント・セブン」という表現を最近頻繁に見かけますのでご存じの方も多いでしょうが、GAFAM+NVIDIA+テスラの7社のテック企業のことを言います。
GAFAMはネットにおける独占的プラットフォーマーで、NVIDIAは最先端半導体を独占しており、中でもAIに不可欠の半導体では唯一無二といえます。テスラはご存じの通りSNS、宇宙企業、電気自動車の雄です。マグニフィセント・セブンと「Stargate Project」の2大勢力が合従連衡しながら世界の覇者になってゆく。これを中国のテック企業が独自のネットワークで対応しているので、三つ巴の状況になります。これは技術が恐ろしく進化することを意味しており。世界はますます複雑化してゆきそうです。
世界はLLMベースの生成AIの流れから逃れられないということはほぼ間違いないのではないでしょうか?
ならばできるだけ早く、無料で使えるうちにAIを経営に取り込んでゆくことが生き残りの可能性を高めることになります。おそらく2年以内にはサブスクで30$程度の有料化は避けられないでしょう。それでも20億人が使用すれば彼らは年間7200億$の収入ですから1年で回収できます。私たちはサブスクという選択の自由権を持っていますから、うまく使うことです。