No.1247 ≪閑話休題。科学こぼれ話。≫-2023.2.8

今回は経営とは全く関係ありません。科学の話です。興味や関心がない方は削除してください。

その1。人間を構成する細胞の数はいくらだと思いますか? 私は約60兆個と習いました。しかし、違うのです。新しい仮説は約37兆個です。これはイタリアのエヴァ・ビアンコニ博士が2013年に数学的手法で計算した結果導き出されました。今ではこれが科学の世界の常識になっています。ちなみに、一つ二つ三つと数えると40万年もかかるそうです。60兆個も37兆個も、ものすごいたくさんの細胞から成り立っている事には変わりありませんが。その人間を分解すると約34の元素から構成されています。65%が酸素、18%が炭素、10%が水素、3%が窒素。残り4%の中にレアメタルをはじめとした約30の元素があります。これを2021年8月の時価で計算したところ、41,000円となりました。構成元素の中で硫黄が最も高価で15,400円(約37%)、次に酸素が9,100円(22%)、次に水素8,470円(20%)。この3元素で時価の80%を占めます。時価41,000円の人間が生涯で創造する付加価値(平均生涯収入)は2020年の日本人でみると約2.9億円ですので、約7000倍。驚異的な利回りとなります。投資対象としては無条件に一押しですね。このような発想は不謹慎ですが、いかに人への投資が重要かを物語っていると思いませんか?

その2。すごいのはここからで、その37兆個の細胞の一つ一つに細胞核があり、その中に23対46個の染色体があります。その中でY染色体をもっているのが男性です。染色体の中には二重構造になったDNAがあり、DNAの中に体をつくるたんぱく質を生産するアミノ酸のレシピを4種類の塩基の組み合わせで32億個のレシピを表現した遺伝子があります。通常これをゲノムと言います。2002年の理化学研究所の発表では、ヒトとチンパンジーのゲノム配列は98.77%が一致し、その違いはわずか1.23%だそうです。また、ノーベル賞受賞者と普通の人のゲノム配列は99.5%が一致し、その差はたった0.5%だとか。だれもが32億個の塩基で表現された遺伝情報をもっており、しかも、一人一人異なるわけですから、32億個×人口80億人の遺伝情報がある計算になります。これが次代に遺伝してゆくのですから、有史以来のあらゆる情報を私たちは細胞の一つ一つに持っているのではないでしょうか? 俗に言うアカシックレコード。

その3。1965年に朝永振一郎博士とともにノーベル物理学賞を受賞されたリチャード・ファインマン博士が「もし世界の科学的知識の全てが破壊されたとき、次世代にたった一文だけを伝えることができたとしたら、どんな情報を伝えますか?」と質問された時、「全てのものが原子で構成されていると仮定する『原子論』を伝えます」とおっしゃいました。
ここで中学の理科を思い出してください。ファインマン博士のおっしゃった「原子」は原子核と電子から構成されていますね。電気的には原子核はプラス、電子はマイナスです。さらに原子核は陽子と中性子から成り立っています。電気的には陽子はプラス、中性子は無電荷です。電気的にプラスの陽子と電荷をもたない中性子が結合しているのはおかしい、きっと結合させる何か(中間子)があるはずだと予言して1949年にノーベル物理学賞を受賞したのが湯川秀樹博士です。さらに、陽子と中性子はそれぞれにクォークと呼ばれる素粒子を3つ持っています。クォークは電子と比べた電気量の違いでアップクォークとダウンクォークの2種類3タイプに分かれます。この発見に大きく寄与されたのが2008年にノーベル物理学賞を受賞された小林誠博士と益川敏英博士です。
陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個からなり電気的にはプラスになります。中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個からなり無電荷になります。さらに電子も電気量の大きさから電子とニュートリノの2種類3タイプが発見されていますが、ニュートリノ研究では2002年に小柴昌俊博士がノーベル物理学賞を受賞されています。これらの研究から光の粒子フォトンやヒッグス粒子の研究も進んでいます。
物質の最小単位であるクォークは超高速ですべての物質を透過し、一瞬で地球の反対側にまで達します。かって日本が量子に強い人材がそろっていた理由はこのあたりですね。桁違いのスーパーコンピュータ「量子コンピュータ」を着想し理論構築したのが日本人だったのは頷けます。しかし、その発想を応用して実用化しているのは中国であり欧米です。利益にならない基礎研究にはカネをかけず応用開発に邁進し、目先の事しか考えない功利主義は天に唾する行為だと思いませんか。経営者や政治家はそろそろ目を覚まさないと!

その4。宇宙は約138億年前に誕生しましたね? 誕生直後は光や電子、ニュートリノ、クォーク、グルーオンなどの様々な素粒子が衝突する火の玉状態でした。それが138億年かけて急激に膨張し、温度はどんどん下がって現在の絶対温度3度(マイナス270度)の極低温の宇宙となりました。
クォークと反クォークの間に非対称が生まれ、物質の量が反物質の量よりわずかな量だけ多くなりました。
残ったクォークとグルーオンから陽子と中性子が生まれ、原子核が誕生しました。この原子核はプラス電荷で不安定だったためマイナス電荷の電子が誕生し、安定した原子ができました。次々に核反応を繰り返し、陽子数が多い原子ができました。陽子数は元素番号と一致しますので、地球上にはわかっているだけで118の元素が発見されています。果たして、この後どれぐらいの元素が発見されるか未知数です。

その5。素粒子から宇宙が誕生し、膨張しながら成長を続け、原子が結合して星ができ、星が集まって銀河が誕生しました。宇宙には1000個の銀河があり、銀河には1兆個の星があります。私たちの地球は太陽系銀河にあります。では宇宙にはどれほどの星があるのか? 1000銀河×1兆個ですから、1000兆個の星があることになります。

その6。地球にはわかっているだけで175万種の生物がおり、未知のものも含めると1億種を超えるといわれています。どの種が絶滅しても生態系が変化し、イナゴの爆発的発生(蝗害)にみられるようにバランスが崩れます。人類は万物の霊長だと言われますが、不安定な生態系ピラミッドの上に乗っかっているにすぎません。ちょうど「神輿に乗る人担ぐ人そのまた草鞋を作る人」と言われますが、神輿に乗る人の一番の仕事は担ぐ人が痛くないように工夫して乗ることですね? 植物一つ、虫1匹いなくても人類は絶滅の危機を迎えるのですから、大切にしなければならないですね。

その7。私たちの祖先をたどってゆくと、10代前で約1000名、20代前で100万名、30代前で約10億名、40代前で1兆名になります。一方、地上にホモサピエンスが誕生して約16万年ですが、累計総人口は何人かを計算した機関があります。アメリカのポピュレーション レファレンス ビューロー:PRB/USAが出した答えは約1080億人。最低でも10回以上生まれ変わらないと計算が合いませんね。