No.1241 ≪新たな局面を迎えた日本経済≫-2022.12.21

今朝の新聞一面に大々的に取り上げられたニュースは日銀の実質的利上げです。2012年12月の故安倍晋三総理が掲げたアベノミクスを実行する上で、異次元の大規模金融緩和「黒田バズーカ」はマイナス金利を導入し、短期的には大きな成果を上げ、アベノミクスの推進力を高めるきっかけになりました。大規模金融緩和政策は約10年続きました。コロナ禍からの復興で世界はインフレになり、インフレ鎮圧のために利上げにシフトした先進国、中でも2022年6月のアメリカFRBの利上げ政策の影響で日本は大幅な円安にシフトし、10月には1$=150円になりました。そのような中で唯一日本だけは金融緩和を継続しました。黒田総裁の任期満了(2023年3月末)までは利上げはないだろうと言われていましたが、遂に、実質利上げに踏み切ることになりました。一気に円安は円高となりました。

No.1234号(2022年10月26日発行)でもお伝えしましたが、日銀のオペレーションに関するメルマガを再掲します。
「日本政府が持っているアメリカ債券は常にトップクラスで、アメリカが公表している海外資産家の国債残高は約7.8兆$と言われますので、その中で日本の持ち分は大幅に減少したとはいえ1.23兆$(2022年10月現在)と言われています。日本政府が保有している海外債券残高は非公表ですが、推計で約1.76兆$と言われています。
そうすると、今の急激な円安をどうとらえるかということが問題になります。
例えば、今年の1月のドルレートは1$=115円です。この時の日本の保有する海外債券残高を日本円換算すると202.4兆円となります。では、10月20日の1$=150円で換算すると264兆円となります。つまり、円が安くなるだけで日本の資産価値が62兆円増加したことになります。これは、消費税率に換算すると、消費税1%で2.5兆円と言われていますので、消費税率25%に相当し、約2年間の消費税減税に相当します。保有する海外債券を売却するわけではありませんので、実際に実行するには困難でしょうが、財源は足元にあるという意味では思考の多面性を試せると思います。
今話題になっている日銀の黒田総裁の金融緩和策の是非もこのような観点で見ると全く違って見えてきます。
G7ないしG10の先進国でインフレ抑制のために金利を上げていない国は日本だけで、いまだにマイナス金利の金融緩和策をとっています。もし、日銀も他国同様に高金利策を打ち出すとどうなると思われますか?
少なくとも今よりは円売りドル買いが減り、ドル売り円買いにシフトするため円高になってゆきます。1$=140円にでもなろうものなら、日本の資産価値は18兆円近く消失します。もちろん、円で持っている資産は目減りしませんが、ドルで持っている資産は目減りしてしまいます。さらに、金利を上げると、コロナ禍で体力がほとんどなくなりゾンビ状態になっている中小企業や大企業は一気に与信が悪化し、経営破たんに陥り、失業者があふれることになります。日本では、まだリスキリング(学びなおし)が進んでいないので、失業者が職を得るには時間が掛かってしまいます。そういう観点から見えれば、黒田総裁の方針は間違っていないと言えます。」

本日(12月21日15:50現在)の為替は1$=132円です。2か月で日本の資産は32兆円も目減りしたのです。10月20日に1$=150円のピークを迎えてから日々是正されて、黒田総裁の会見前日は1$137円でしたが、会見後は132円まで円高になっています。

問題は会見の内容です。日経新聞によると1面トップ記事で「大規模緩和を修正する方針を決めた。長期金利の変動許容幅を0.25%程度から0.5%程度に広げた。長期金利は足元で変動幅の上限近くで推移しており、事実上の利上げを意味する」とあります。これにより、企業の借入金利は最低でも0.25%以上上昇する可能性が高くなりました。1億円で25万円の支払金利アップですが、たかだか25万円とみるか、なんと25万円もとみるかは企業の財務力によります。これに関連して様々な資金繰りの制約が出てくると思います。ゾンビ企業が増えること間違いありません。

BIS(国際決済銀行)が規定するゾンビ企業の定義は「3年以上にわたってインタレストカバレッジ比率が1未満、かつ設立10年以上」の企業を言います。インタレストカバレッジ比率とは、ご存じの通り、支払金利÷営業利益の比率を言います。ちなみに、帝国データバンクによるとBIS基準でみると日本のゾンビ企業は16.5万社、経営実態が把握されている企業における割合で言えば約11%に相当するそうです。今回の日銀の政策方針転換により、ますます、破たんリスクが高まる企業が増えることは明確です。

仕事納めの1週間前の政策転換は、今後の日本経済や環境変化を分析する上で、無数のチャンスとピンチ、メリットとデメリットが入り混じったとても大きな変化になると思います。経営者は今年の年末年始は、山籠もりするつもりで、相当に思考を深める必要がありそうです。