No.1233 ≪経営の黄金律(その3)≫-2022.10.19

私が経営コンサルタントになって約40年。その間、経営診断、経営支援、社員教育などで500社以上の会社の経営者、幹部、社員の方々とかかわらせていただきました。講演会やセミナーでのご縁を含めるともっと多くなるでしょう。深いご縁の中で、会社の恥部ともいえる固有の問題点を共有し、長期間にわたり伴走しながら改善改革する中で、見事に問題解決し、成長発展する優れた経営者には共通した思考があることに気づき、次の9つからなる「経営の黄金律」を法則化しました。
「1.市場は豊穣 2.原因自分論 3.過去と他人は不変だが未来と自分は可変 4.解決策は社内 5.仕事はサービス業に進化 6.サービス業は顧客満足度の追及 7.顧客満足度は社員満足度 8.素明研一即行 9.ビジョンは実現する」

前2回で1〜7までご説明しましたので、今回は、8と9になります。

8.いつも「素明研一即行」
これは、素直、明るい、研究熱心、一流思考、即行動の頭文字をとっています。伸びる経営者は「素直」です。過去から現代を現状認識し、一言集約で問題の本質を突き止め、成長発展するための改善具体策を提案すると、「はい、わかりました。やりましょう」と素直に受け止めて決断される方は間違いなくうまくゆきます。
もちろん、できない理由を具体的に滔々と述べられる方もおられます。
ある時、ある社長に「全社員が一堂に会して1泊2日で経営計画書を策定し、3か月、できれば6か月目標先行管理を導入しましょう。毎月の業績はガラス張りにして問題を共有しましょう。そのための遂行機関を設置して2週間毎にPDCAを回しましょう」と提案しました。
社長は「おっしゃることはわかります。私もそんなことができる会社にしたい。しかし、全社員を2日間も拘束するのは難しい。それに今まで決算書も見せていないので、幹部ですら理解できていない。まして、ガラス張りにして外部に漏れたら大変なことになる。来月の事さえわからない営業マンに3か月先、まして6か月先の予定なんてわかりません。もっと、基本的な条件が整備され、人材が育ってからでないと失敗します。今の当社にそれを実行するのは難しいです」とおっしゃいました。
「2日が難しいなら1日でも良いです。場合によっては半日を数回でも構いません。それに決算書だって、最初は売上高、粗利益、原価で構いません。理解が進めば徐々に範囲を広げればよいのです。人材育成は卵が先か鶏が先かの問題なので、どちらが正しいかわかりません。人は立場を与えられれば誰だって成長します。」と私。
「確実に良くなる保証があればよいが、それがなければ難しい。そんな危険は冒せない」と社長。
「では、どういうやり方だったら良いのですか?」と私。
「それがわからないから頼んでいるんじゃないか」と社長。すると、横でその話をじっと黙って聞いておられた専務が「社長、やってみましょうよ。我々ではあれだけ頑張ってもできなかったんです。ここは原点に戻ってやってみましょう」とおっしゃいました。「そうだな、専務の言う通りかもしれない。よし、心を入れ替えてやってみるか」と社長。わだかまりやプライドや固定観念を横において、私たちの提案を素直に受け入れられた社長の行動は見事でした。土日を使って経営計画策定会議を開催し、過去の経営状態を公開し、問題点を共有しました。問題を直視した社員の決意表明を聞いて社長は自分の考えが間違っていたと気づき、社員の意識の高さと忠誠心の強さに感動しました。トップを中心に全社員が一体感のある組織は強いです。どんどん成長し、あっという間にV字回復し、高収益企業になりました。
不思議なもので、一つうまくゆくと、自信がついて明るくなります。そして、もっと上を目指したくなるのが人情です。自分を成長させたい、自分を磨きたいと皆の研究意欲は留まるところを知りません。
良いことは即実行、悪いことは即中止する勇気ができてくるのです。そのもっとも基本的なことは「素直」です。
問題点はトップが一所懸命努力すれば必ず解決できるものしか顕在化しません。つまり必ず解決できるのです。それを放置するか解決するかはトップの「素直」にかかっています。

9.ビジョンは実現する
仏教詩人の坂村真民氏は「念ずれば花開く」とおっしゃいました。この詩碑は全国に680以上あります。その第一号は洛北にある常照寺にあります。36歳で未亡人になり5人の子供を育てられたお母様が苦しい時にいつも口にしていた言葉だそうです。念じて一心不乱に一所懸命に努力すればかなわないことなど何もない。

また、私が勝手に作った「魔法の鏡の法則」があります。私たちはだれもがはるか頭上に魔法の鏡をもっていて、心に念じるとその思念が魔法の鏡に飛んで行き、反射してしかるべき未来に現実化するのです。プラス思念はプラスビジョンを、マイナス思念はマイナスビジョンを実現化する魔法の鏡を持っています。この魔法の鏡は全員が持っていますので、日ごろやってみればそれを実感できます。
さらに、人は皆、意識をもっていて顕在意識と潜在意識があります。「氷山の一角」という言葉や絵でご存じだと思いますが、水面に出ている氷が顕在意識、水面下にある氷が潜在意識と言われ、その割合は約1:9で、ほとんどが水面下にあります。天才と呼ばれる人でも1.3:8.7だとか。顕在意識は形而上にある論理、思考、知性、理性、決断、選択などの意識で人に説明や証明が可能です。一方、潜在意識は形而下にある無意識、思い、思念の意識で人に説明はできません。潜在意識は万能機械とも呼ばれ、思いを念ずるとそれを実現するように働くようになっています。思いを念じて、一心不乱に不撓不屈の精神で一所懸命に努力すれば実現するのです。
潜在意識も魔法の鏡も「念ずれば花開く」もすべて誰もが持っている人間の真理を表しています。目に見えないものはいかがわしいと思われるかもしれませんが、実は証明する方法があるのです。
例えば、あなたは車を運転しています。大事な方との約束の時間が迫り、イライラしています。道路は次第に渋滞しだして、信号機がみるみる赤に変わりだしました。とても約束の時間には間に合いません。15分は遅刻しそうです。その時が潜在意識や魔法の鏡の存在を実感し証明する絶好のチャンスです。大事な方に「大変申し訳ございません。渋滞でとても間に合いません。30分遅れます」と電話するのです。幸いにも「お気をつけておいでください」と返答があります。すると、どうでしょう、赤が続いていた信号機が青に変わり、道路の渋滞が次第に緩和してゆくのです。遅刻するどころか予定通りの時間に間に合うことができるのです。
これは遅刻すれば大事な方を怒らせて破談になる、よりによってこんな大事な時になぜ渋滞するんだ、なんと運が悪いのかとマイナスイメージが魔法の鏡に反射して信号機を赤にしたのですが、最悪の事態を直視し、受け止め、誰のせいにもせず、いかなる結果も受け止める覚悟をすることで、明るいプラスイメージが魔法の鏡に反射し、信号機の色を変えたのです。一度試してみてください。

人間本来に備わっている能力を信じて活かす経営者になるとビジョンは必ず実現するのです。だから、持つべき思念は常にプラス、ポジティブ、楽観的、明るいものであるべきなのです。