No.1163 ≪Z世代の人材を生かす≫-2021.5.27

「社会構造が変化する唯一最大の要因は人口構造の変化だ」とドラッカー博士は喝破されました。これは皆さんも共感していただける真理だと思います。そして、今話題のご存じ「Z世代」を知ることはこれからの10年、20年先のあなたの会社の業績を左右するヒントになります。
今や世界は多面的・多層的に密接につながっており、世界、特にOECD諸国で起きた出来事は直接間接的に大きな影響を受けます。もちろん人口や国の数では圧倒的に多い途上国の影響も受けますが、経済的には75%以上がOECD20か国で占めていますので、当然かもしれません。

過去に世界を巻き込んでショックを与えた出来事は、1989年のベルリンの壁の崩壊、2001年のNY世界同時テロ、2008年のLBショック、2020年のコロナパンデミックです。我が国では、さらに、1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災が加わります。このようにみてきますと、私たちはここ50年ほどの間に、5年から10年おきに価値観が変わり行動変容せざるを得ない大きな出来事が起きており、その都度、復興し復活してきた時代に生きていることがわかります。

世界で起きた出来事とその時の世界人口、平均年齢を拾ってみました。1989年:ベルリンの壁崩壊(52.8億人 24歳)、2001年:NY世界同時テロ(61.6億人 26.3歳)、2008年:LBショック(67.1億人 28.5歳)、2020年:コロナパンデミック(76.6億人 30.9歳)。世界人口は毎年着実に1%以上増加し、平均年齢は0.2歳高くなっています。つまり平均寿命が延びているのです。日本はさらに変化しています。少子高齢化し、人口がピークアウトしたなかで、40年以上にわたり世界ダントツトップで寿命、平均年齢とも伸び続けています。若い世代の果たす役割が年々高まっているのです。彼らを理解しなければ経営が成り立ちません。

今話題のZ世代は1996年~2015年の約20年間に生まれ、今の年齢にすると5歳~25歳の年齢層で、10年後の主流になる世代と言えます。生まれたときからインターネットがあり、物心ついたころには携帯電話をもち、自然とスマホに移行していった世代です。当然のことながらデジタルが基本で、白黒がはっきりしています。スマホのない生活など想像すらできない世代です。彼らの特徴は様々に分析されていますが、大まかには次のような特徴を持っているようです。

1つ目は、SNS、具体的にはLINE、Instagram、twitter等で一瞬でつながる「ソーシャルネイティブ」です。Facebookは今やY世代や団塊世代のツールでZ世代には不評のようです。彼らは、地球環境や自然保護に対する問題意識が極めて高く、SDGsの申し子と言えます。スウェーデンのグレタさんの♯Fridays For Future運動に共感したり、カナダのエマさんの#No Future No Childrenに共感したり。
2つ目は、自分の個性を大事にすることから「多様性(ダイバーシティ)」を認める価値観を持っています。ひところ、誰もがヴィトンのバッグや財布をもっていたことがありました。有名ブランドを所有することが自己表現にもなっていましたが、いまではノーブランドが普通で身に着けているものを全部合わせても数千円しかかかっていない人がたくさんいます。
3つ目は、本物志向と物事の本質を追求する思考と共感性を大事にする。自分が良い思うものをつくりブランドとしてSNSで発信し、それに共感した人々がそれを求める時代です。今はやりの言葉で言えば、D2C(Direct to Consumer)の担い手です。
4つ目は、「リアリスト」で経済的に保守派。自分で所有することに価値を感じないのでサブスクが主流です。車はカーシェアリング、部屋もシェアルーム。その方が安いし、手間がかからないし、便利だと考えるのです。
5つ目は、飽き性です。集中できるのはごくわずかな時間だけ。だから、TIKTOKは15秒間、Twitterは140文字、Instagramは写真中心です。

これらZ世代(1996年~2015年生まれ)の人口は日本では約2104万人で、人口の16.5%に相当します。まだ1年間の出生数が100万人以上超えていた世代です。2016年以降は年間出生数が100万人を割ってしまいますのでますますZ世代の構成比は高まって影響力を発揮するようになると思います。

産労総合研究所が毎年新入社員のタイプを発表していますが、「なるほど」と感心してしまいます。
Z世代の学卒が最初に世に出たのが2018年で、この時は「SNSを駆使したパシュートタイプ」と名付けられました。平昌五輪で日本が優勝した4人チームで競うスケート競技のパシュートです。
翌年の2019年には「働き方改革法」が施行されましたが、この時の新入社員には「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」と名付けられました。コロナ禍でパンデミックとなった2020年には「結果が出せる?! 厚底シューズタイプ」、リモート生活が中心になった2021年には「仲間が恋しい ソロキャンプタイプ」と名付けられました。

これから入社してくるZ世代をいかに育てるかで10年後の業績が変わります。デジタル世代の彼らに、アナログ世代の労働価値観を押し付けてもうまくゆかないでしょうが、だからと言って、彼らに迎合しても勘違いされるのがおちだと実感しています。リアルでは滅多に口にしない本音がどこにあるかはさておき、彼らの良いところを見て、丁寧に伸ばしてゆく努力をすることが大きく化ける人材を育てる本質であることは古今東西変わらないと思います。